売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(29) ~畑中学 取引実践ポイント~ ポイントは審査承諾を早めに「住宅ローン本審査の手続き」

 大手建売会社から媒介契約書にこの特約文を追加してほしいと依頼があった。

 「買主様の住宅ローンの本審査手続きをサポートしなければ仲介手数料は支払わないものとする(略意)」

 何だろうこの一文はと驚いて、理由を聞いたところ「住宅ローン本審査をお客様任せにする不動産会社さんがいて、その場合、決済日が延期となったり、ローン特約で契約解除になることが多いんです。それだと困りますので入れさせていただいています」ということであった。

 さすがに事前審査は通しているだろうから、本審査がダメとなることはそう多くないだろうが、お客様任せだと手続き書類が間に合わず、結果本審査承諾が遅れて決済日を延期せざるを得ないことは大いに考えられる。そのため、この特約文は買主の本審査手続きを手伝って決済日が延期とならないようにスケジュールをコントロールしてください、というのが主旨だろう。

 このように住宅ローンの本審査で注意すべきは、(1)提出書類の準備、(2)スケジュール管理、この2点に絞られてくる。金利を含めた金銭的諸条件は資金計画や事前審査時にある程度クリア済みとなっている(はず)ので、気をつけるのはこの2点だ。(1)(2)とも共通するポイントは早めに審査承諾を得るスピード感だ。

 まず(1)だが印鑑証明書、住民票など市区町村役場で取得しなければならない書類がある場合は、平日に時間を割かなければいけないのでどうしても準備が遅れがちになる。印鑑証明書、住民票は私たちが代理取得するにはハードルが高いので買主自身かご家族に取得をお願いすることになる。

 市区町村役場での取得が難しければ、コンビニでの取得などを案内し早めの取得を依頼しておきたい。他に納税証明書や課税証明書が必要な場合は、慣れない書類などで買主での取得だと誤った書類の取得や心理的に気軽に取得ができない。そのため、委任状を書いてもらい私たちで取得ができるようにしても良いかもしれない。

 (2)は当然だ。いつまでに書類を取得して本審査書類と一緒に提出して下さいと売買契約後から2週間程度は何かとサポートしておきたい。

 なお、事前審査で依頼した金融機関以外で「金利が安いこの金融機関で審査を受けたい」と買主から言われた場合は、「この日まで審査承諾を得る必要があります、もし間に合わないなら諦めてください」とスピードとスケジュールを、念を押しておくぐらいが丁度よいだろう。売買契約書に住宅ローン特約期限などのスケジュールは記載されているが、何故だか買主は忘れがちになる。書いてあるでしょ、で放置しておくと痛い目に合うので、こちらで管理していきたい。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。