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関係性を踏まえて文体が変わる ~畑中学 取引実践ポイント~ 「重要事項説明書、売買契約書の作成方法と時期」 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(20)

 重要事項説明書と売買契約書は書く内容が異なる。当事者が違うので書くべき内容、文体が変わってくるのだ。

 ご存じのとおり重要事項説明書は宅建業者(宅地建物取引士)が買主に物件の購入判断にあたり重要と思われる事項を説明した書類なので当時者は宅建業者と買主と言える。売主も不動産所有者なので当事者なのだが、真の意味では先の2者だ。法令上の制限など専門知識も必要なため宅建業者の方が買主よりも優位に立ちやすく、その関係性は宅建業者→買主と一方向となりやすい。ただし、買主が説明内容を理解しないと意味がない。したがって、重要事項説明書では買主の購入判断に影響する重要な事柄をできるだけ「平易に」「明確に」「どう買主に影響するのか」、この3点を意識しながら言葉を選択し作成していくのが正解となる。新人の頃は専門用語を羅列し記載するのが精いっぱいだろう。

 筆者もそうだったので、買主からは「分かったような、分からないような……」と言われることが多かったが、上記3点を意識して作成していくと、それらが改善された。説明をした結果、「よく分かりました」となるのを目的に作成していきたい。

 なお、文体は顧客への説明なので敬体となり、「本物件より約150mに河川があります」といったように〝ですます調〟となる。一方で売買契約書は売主と買主で結ぶ契約条件を明記した書類なので、当事者は売主と買主となり、宅建業者は媒介なら当事者にはならない。そのため書面交付のみが義務で、実務では行うが説明も法律では求められていない。関係性は売主←→買主とイーブンで双方の納得が必要となる。そのため売却および購入条件が互いに理解できるように、「平易に」「明確に」「どう自分に影響するのか」作成していくことになる。

 曖昧な表現だと売主と買主で解釈が異なってしまいトラブルになることがあるので、「令和5年2月13日までに確定測量図が売主から買主へ交付できなければ本契約は解除となり、手付金など支払済の金員は解除日より10日以内に買主の指定口座へ振込によって返金する。なお、利息は付さず振込手数料は売主負担とする」といったように平易、明確、影響を意識しながら書くことになる。

 文体は売主と買主のイーブンの関係から敬体ではなく常体で、条件を伝える〝だ・である調〟となる。ともに作成時期は購入申込書の授受があってからが多いだろうが、できるだけ購入申込を受ける前に買主へ契約条件を漏れなく伝えられるように整理するため、媒介契約の取得後にベースとなる重要事項説明書、売買契約書は作成しておきたい。あとは買主の契約条件等で修正を加える程度だと、売買契約前のタイトなスケジュール感に合うだろう。