総合

大言小語 無視する大事さ

 電車の中で週刊漫画雑誌を読んでいる姿を見かけることが少なくなった。一方で、スマホで漫画を読んでいる人は多くいる。漫画もスマホやタブレットで読む時代になったのだろう。一時話題になったワニが死ぬ話は、SNS発の漫画だ。

 ▼ただ、大ヒットとなった漫画は、今でもほとんどが紙の雑誌の漫画だ。最近アニメ化や映画化で話題となった「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「東京リベンジャーズ」は、いずれも漫画雑誌の連載から。なぜなのか。面白い仮説を立てたのが、話題の成田悠輔イエール大学助教授だ。

 ▼成田氏によれば、SNSは目の前の反応が見えすぎて振り回される。雑誌は漫画家や編集者がよい意味で読者を無視するノウハウを確立している。すごいものは、目の前の人が気付いていないものを新たにつくり出し、消費者をつくり替えていくもの。名作や価値の大きいビジネスは、短期的には目の前の人を無視することが重要で、反応はあまり見えすぎないほうがよいという。

 ▼スマホが普及し、いつでもどこでも情報を受け取り、誰もが情報を発信できるようになった。ただ、炎上に代表されるような短期間でネガティブな反応に振り回される事態も頻発している。

 ▼様々な分野で、新しい価値を生み出すことが求められている。スマホの電源を切って、自分と向き合う時間が今まで以上に大事になっているのかもしれない。