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データセンター急成長、EC取引活発で開発競争 日本はアジアのハブ的存在へ 誘致先に海外企業が熱い視線

 感染症の大流行で巣ごもり生活を強いられ、通販需要が増した。コロナ前からEコマース市場は拡大傾向にあるがコロナが拍車を掛けた。それに伴い投資マネーを引き付けるのがデータセンターだ。不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によれば、特にクラウドサービス向けの大型データセンターの開発投資が急増している。世界のデータセンター数の約4割が米国に集中し、中国と日本が続くが、日本はアジア太平洋地域でデータセンターのハブ的な存在になる可能性を秘めているとする。

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 在宅勤務が急速に浸透した。コロナが収束しても出社とのハイブリッド体制が続き、オンラインを使う頻度が上がりIT需要が拡大する。

 JLL日本キャピタルマーケット事業部の浅木文規シニアディレクターは、「改正個人情報保護法が22年に施行予定だ。保存先の厳密化が一層求められ、国内のデータストレージ需要は増す」といい、地政学的リスクのある香港や国土面積の小さいシンガポールに代わってデータセンター誘致先として世界的に日本が選ばれると見立てる。

 質の高いコンピュータをどれだけ稼働できるか。顧客獲得に欠かせない要素だ。自然災害リスクを想定しての立地選びでは精密機器を格納するだけに洪水、津波、高潮など水害リスクがある場所は候補地になり得ない。東京湾岸は都心に近いが塩分を含んだ海風を受けるため選ばれにくい。ただ、都市とデータセンターとの距離は近いほうがいい。通信の遅延は企業にとって致命傷になるからだ。

 浅木氏は「データが相手に届く時間は首都圏から50キロ離れると1000分の4秒の遅延があると言われ、距離が遠いほど悪化する。わずかな遅延もデータのやり取りを頻繁に繰り返すことで数秒の遅れにつながる」と説明する。

 MCデジタル・リアルティ営業本部長の君島太氏は、「23年以降の運用投資が3000億円規模を計画している」という。別の企業は成長が見込まれるクラウド企業に照準を当ててデータセンターを提供していくと鼻息は荒い。

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 だが、旺盛な需要も懸念がないわけではない。データセンターは物流施設や倉庫のような満室稼働で始動することはほぼない。「借りるテナントは満室稼働では意味がない。データ量の増加を見込み床面積に余裕を持つ必要があるためだ。例えば稼働率30%で始動し、5年後に100%稼働率にする。このため立地で物流施設と競合すると、勝てる事業環境になっていない」(物流施設の供給に詳しい不動産鑑定士)。

 物流施設に空室をつくる発想はないが、データセンターは将来の事業規模を見据えて先に床を手当てする。つまり、空室を抱えて借り上げることで銀行の評価目線に影響しやすい。技術革新が進み情報を蓄積するストレージ性能がアップしてデータ容量が増えれば省スペース化が進み、将来を見据えて余分に借り上げていた部分が不要となり、使っていない床に家賃を払い続けて収益を生まないまま解約に至る可能性もある。

 これからの技術革新は環境負荷への対応もテーマだ。

 「環境負荷を低減するデータセンターの事例が海外でも出始めている」(JLL日本執行役員の宮本淳氏)。

 世界的な脱炭素社会の流れを重視してデータセンターを選別するテナントの動きを想定するなど通信性能やデータ容量といった技術革新の追求だけでなく、電力をどのように確保すべきかの仕組みの革新が求められるなど期待と不安が混在している。