政策

国交省 経過3年で不明土地法検討 地域福利増進事業の期間延長へ 探索の長期化など課題も

 所有者不明土地特措法(不明土地法)の施行後3年経過の見直しに向けた検討が進んでいる。政府は、所有者不明土地(不明土地)の円滑な利活用に向け、現在最長10年となっている地域福利増進事業の使用権の上限期間を延長し、民間事業者の参入を促す狙いだ。更に、地域の防災・減災に寄与する備蓄倉庫棟の防災関連施設の整備事業や、再生可能エネルギーの地産地消に寄与する発電設備の設備事業などを地域福利増進事業の対象に追加し、新たな土地利用ニーズを組み込んでいく。

 地域福利増進事業は、地域住民その他の共同の福祉や利便性の増進を図るために行われるもの。事業主体は限定されないが、原状回復が可能なものについて都道府県知事の裁定により最長10年間の使用権を設定することで、不明土地を利用した事業の実施を可能とする。現行制度では、公益性が高い収用適格事業と、収用適格事業ではないがそれに類似する施設などが対象となる。

 10月28日に開かれた有識者検討会では、国土交通省土地政策課が地域福利増進事業の活用実績について報告。19~21年度における全国14地区でのモデル事業実施のほか、新潟県粟島浦村による全国初の同事業裁定申請事例(21年9月24日公告)を紹介した。人口344人の小規模離島である同村では、防災・減災の観点から管理不全状態であった高台の土地の整備を検討。所有者探索から今年9月の裁定申請までに約2年を要するなど、時間的な課題が浮き彫りとなった。更に当初想定区域の一部が20m2以上の建築物付き土地だったために、不明土地とはならず一部を地域福利増進事業区域から外すといった課題も示された。

用地分野の連携強化を

 同検討会では経済産業省と環境省から、地域と共生する再生可能エネルギー発電事業について説明が行われ、21年5月に成立した改正温対法と合わせ、地域の脱炭素化に向けた促進区域設定の検討状況などが報告された。

 今後の土地政策と関連して、官民を問わず土地の管理・利用・取引のいずれの場面でも発生する用地関係業務の課題と今後の方向性が示された。高度な専門スキルを要する半面、権利関係の複雑化や災害の激甚化に伴う迅速な社会資本整備ニーズの拡大、官民の人手不足という課題を踏まえ、今後は所有者不明土地連携協議会の活動内容を拡充すると共に、関係者の拡大や連携強化を図る。災害対応の観点からは復旧・復興事業の計画段階や事業実施時の助言を行うほか、官民連携による研修・講習会の開催やノウハウの共有を検討していく。

 委員からは「再エネの地産地消と言うとき、どこまでが地域となるかに課題がある。更に使用権を延長する場合、事業存続期間の取り組みを把握する仕組みがより重要になる」と指摘。用地関係業務については行政が担うことに信頼性の高さがあるとした上で、「小さな自治体にとっては広域連携を図り、官民でノウハウを共有していくことが重要」との意見が出された。