マンション・開発・経営

住まいやオフィスなどの空気環境を向上 感染対策の導入進む 実証実験から実装段階へ

 緊急事態宣言が解除されたものの、新型コロナ感染拡大については、先行きが不透明な中、大手ディベロッパーは住宅やオフィスなどで体系的な感染対策導入を進めている。統一的な基準の導入に加え、IoTを使ったエアロゾル対策を実施。新築分譲マンションやリフォームで全館空調システムを導入し、健康に配慮した住まいの空気環境実現を目指す。

全施設適用の統一基準

 三井不動産は、住宅やオフィス、商業施設、物流施設など同社が開発、運営するすべての施設に共通して適用する「三井不動産9BOX感染対策基準」をとりまとめた。新型コロナウイルスの感染ルートは 「飛沫感染」「エアロゾル感染」「接触感染」の3つ。施設ごとに適切な感染対策ができているかを確認するため、感染ルート別にそれぞれ3つの対策項目を重要なものから並べ、合計9つのチェックボックス(9BOX)を設定した。

 住宅やオーナー物件などは一部適用を除外。現時点で約9割の主要施設で適用・導入済みだ。9BOXは、顧客用スペースだけでなく、施設内の従業員向けポスターの掲示やマニュアル作成などで感染対策の周知・徹底を行う。

 住宅に関しては、分譲マンション、賃貸マンション、シニアレジデンス、寮、販売センターなどが対象。既存の物件や専有部は対象とせず、導入する対策についても入居者の負担に配慮して検討していく。

 9BOXに加えて、施設特性に応じて先進的なIoT技術の活用などにより、更なる感染リスクの低減を目指した「アドバンスト対策」を積極的に導入する。

IoT活用しエアロゾル対策

 「アドバンスト対策」の一例として、同社は、千葉・柏の葉スマートシティの「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」と飲食店舗が20店舗集まる「柏の葉かけだし横丁」において、ピクシーダストテクノロジーズ(PxDT)独自の感染症対策ソリューション「マジキリ プランニング」を導入した。「マジキリ プランニング」は、エアロゾル感染に対する新たな解決策を提案するサービス。具体的には、換気口や排気口、座席や間仕切りの配置や換気設備などの改善を実施する。「マジキリ プランニング」を使い、感染リスクを可視化すると共に改善策を検討した。同社は対象施設を拡大していく意向だ。

全館空調で特許取得

 マンションにおいて、健康を意識した空気環境の改善が進む。三菱地所レジデンス、三菱地所ホーム、メックecoライフは、二重床下の空気層を活用したマンション用全館空調システム「新マンションエアロテック」に関する特許を取得した。二重床下空間をダクトに代わる空気の経路とし、費用のかかるダクト工事を不要にすることにより、大幅なコスト低減を実現。

 水回りの天井などに設置された換気装置から、床置きの室内機を設置する収納スペースなどに新鮮な空気を送ることで、各室にダクトを介さず新鮮な空気を供給でき、費用を掛けずに省スペースで効率的な換気を可能とした。

 二重床を使ったマンション空調システムには、野村不動産が19年に導入した「床快full(ゆかいふる)」がある。