マンション・開発・経営

都中協・鶴巻通雄新会長に聞く 倫理観養い誇り持てる業界へ 「目指すは究極の親睦団体」

 東京都内を中心に事業を展開するワンルームマンション開発事業者が集い、創立25周年を迎える首都圏中高層住宅協会(都中協)。その第3代会長として、9月1日にエスティア(東京都港区)社長の鶴巻通雄氏が就任した。その抱負や今後の方針を聞いた。

 就任に当たり、鶴巻会長は都中協を「究極の親睦団体にしたい」と方針を述べた。具体的なイベントや政治活動などは重視せず、会員間の親睦に絞って運営していく考えだ。その背景には、同協会の成り立ちや性質がある。

 鶴巻会長によると、同協会が設立された約25年前、投資用ワンルームマンション業界は過度な競争の渦中にあった。限られた市場を手練手管を駆使して奪い合う時代で、業界のイメージも芳しくはなかった。そうした環境の健全化を図るべく、業界の主要企業19社が集まり同協会を設立。「創立メンバー企業を合わせると、首都圏のシェアの9割を占める規模だった」と鶴巻会長は語る。

 集まった会員企業が目的としたのは、「親睦、コンプライアンス、業界全体の健全化」。殺伐とした競争意識を改め、互いを尊重し、高い倫理観を養い健全な業界としてイメージ向上を図る――鶴巻会長も、そうしたビジョンを掲げた創立メンバーの1人だ。その精神は、会員(賛助会員含む)が当初の倍以上に増加した今日も保っている。

 そのため鶴巻会長は、「不動産業界には多様な団体があり活動も様々だが、当協会は必ずしも規模を拡大することなく、あくまでも親睦を軸とした集まりでありたい」と方向性を定める。

「法令遵守越えたモラル」

 そして親睦と同様かそれ以上に鶴巻会長が重視するのは、「倫理観の向上」だ。「投資用不動産は〝売って終わり〟ではなく、顧客との長い付き合いが前提。だからこそ高い倫理観が求められ、それなくしては事業が立ち行かない」と力説する。「コンプライアンス」は一般的に「法令遵守」と訳されるが、「法令を守るのはある意味当然であり、それだけで十分ということでは決してない。業者間の商倫理や、顧客に対するモラルこそが肝要」(鶴巻会長)。

 こうした考えの下、新体制への移行を契機に改めて〝投資用不動産事業者の倫理〟を再検証し、「当協会としての倫理憲章を策定したい」と目標を述べる。そして「誇りを持てる業界、所属がステータスとなる協会」という将来のビジョンを描く。

創立の精神伝える

 自身が新会長として推された理由について、「創立時、自分は最も若いメンバーだった。その後約25年を経て、会員にも若い世代の企業や経営者が増えたため、先輩たちの教えを新たな世代に受け継ぐ役割を課されたのでは」と受け止める。鶴巻会長自身、同協会で教わった姿勢の実践によりこれまで事業を継続してこられたという意識があり、そのバトンを次世代に渡すという責務に意欲を見せる。

 とはいえ、理想の実現は一筋縄ではいかない。投資用不動産業界はいまだ「内外から誤解の目がある」(鶴巻会長)状況で、払しょくは容易ではない。また〝倫理観〟と言っても、事業者によりその定義は異なり統一は困難だ。それを踏まえた上で鶴巻会長は、「深い親睦を土台に、時流に合わせた形で会員各社の意識を擦り合わせ、太い根のような倫理観を育んでいきたい」と粘り強く取り組む構えだ。

 このほか、新体制の発足と併せて会の運営体制も刷新を検討。「会員も皆意識が高く、新たな企画や活動を考えている」(鶴巻会長)として対外的な見せ方などもより現代的にリニューアルしていく見通しだ。〝同協会の伝統を堅持しつつ、時流に合わせて最適な方法を模索する〟。鶴巻会長の語り口からは、そうした姿勢が強くうかがえた。