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マンション事業に転機、三密回避で変わる立地選定 コロナ禍で緊急アンケート 工業市場研調べ

 新型コロナウイルス感染防止対策として政府が4月7日に緊急事態宣言を発令したのに伴い、不動産マーケティング会社の工業市場研究所(東京都港区)は、主要住宅・不動産企業30社を対象に緊急に実施した「感染拡大防止策と住宅・不動産市況」のアンケート結果をこのほど公表した。それらを踏まえて「アフターコロナ」の住宅・不動産市場と事業戦略について同社の展望をまとめた。

 緊急事態宣言に伴う外出・営業自粛や三密行動回避を受けて、テレワークを含む在宅勤務などの徹底に努めている各社に対応を尋ねると共に、事業や市場への影響について聞いた。

モデル・販売拠点17社が閉鎖、休業

 モデルルーム、販売センターの一時閉鎖、休止などが相次いだ新築マンションの販売現場の対応について尋ねた(有効回答26社、複数回答有)。それによると全館閉鎖・臨時休業(集客停止・クローズ)が17社、完全予約制が4社、営業時間短縮が3社、一部閉鎖が2社、既存顧客限定対応が1社、閉めていないが1社だった。個別の自由回答を見ると、「高額住戸等でキャンセル(勤務先不安、雇用不安、株価下落の影響)が発生」「海外居住者の渡航禁止や送金手続き不可で都心タワーマンションの契約延期が発生」「シニア層も相続対策や老後資産の目減りによる将来不安で購入回避」「大量集客の現場は来場に大きな影響がある」などの動きが挙げられた。同社では「受け身の営業を余儀なくされる」状況が続いているとしている。

 また 事業系を含む不動産全体についての意見が寄せられた中で、今後、推進する事業や新規事業についても質問した。各社からは「新規取り組みは実質停止状態」「景気減退と資金需要への対応優先」「推進プロジェクトは相当厳選する」「働き方改革の進展で新規事業のチャンス」「廃業店舗のオフィス転用」「定期借地権の再評価」「ニーズが変わらない業種の再認識」といった意見が聞かれた。

郊外シフト活発化も「分散・分離」がカギ

 今後の新築マンションの需要動向について同社は、「昼間人口が密集する都心部や人口密度の高い都心後背地を避け、利便性よりも感染回避、環境重視で郊外部を選択する動きが活発化する可能性が高い」とし、立地や価値観に変化が予想されると分析。「分散型生活拠点(職・住・育・学・遊)やワーケーション、マルチハビテーションが浸透し、首都圏郊外部への分散化や地方中核都市でのコンパクトシティ形成が加速すると指摘した。また在宅勤務やテレワークにふさわしい自宅環境の整備が促され、雇用形態やオフィスの必要性と分散化などの議論が進むとしている。

 昨今の再開発プロジェクトが「にぎわい」拠点の創出、「コミュニティ」(人のつながり)形成の演出、多世代交流、複合化(テナントミックス)等を開発コンセプトや商品企画に取り入れてきたことにも言及。感染防止シェルターとしての機能強化が「住まい」に求められると共に、集客施設との「分離化」「分散化」という考え方によって、にぎわいよりも不特定多数との接触回避を求める需要も今後増えるのではないかとしている。

当面は底値探り

事業仕分けが課題 ホテル計画の用地情報が仲介業者を経由して出回り始めているとし、「当面は底値探りが続き、既存事業の仕分けや強化、新規事業の模索が各社の共通課題」だと指摘。「積極的に動き、新しい風を起こし、消費マインドを刺激し続けることこそがアフターコロナで重要となる」と提起している。

 この調査は、4月8~24日にかけて電子メールにより実施。ディベロッパー18社、ハウスメーカー3社、販売会社4社、その他5社から回答を得た。