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大言小語 コロナはどこから来たか

 「空を奪われた橋は、もはや橋ではなくトンネルだ」。これは日本橋が首都高速の高架で覆われたときの地元の人の感想である。64年の東京オリンピックに向け、交通インフラの整備が急がれる中、用地取得を必要としない河川の上空が選ばれた。今度はその空を取り戻すために地下化するプロジェクトが動き出している。まさに半世紀を超える年月が人々の〝価値観〟を変えた好例である。

 ▼〝時代の空気〟は確かに存在する。新幹線が開通したのもオリンピック直前で、当時は日本全体が若者のように躍動していた。しかし、90年代初頭のバブル崩壊を機に日本は暗いトンネルを歩き始める。その暗い闇をようやく抜け出そうとしていた矢先、突如現れた新型コロナウイルスが出口を奪い、二度目のオリンピック開催までもが危ぶまれる事態に。

 ▼ウイルスは人間や動物の細胞内でしか増殖できない最も原始的な微生物である。その原始的微生物が人類を脅かすほどの脅威を持つのはなぜか。人類にとって未知の〝新型〟だからだ。では、新型コロナは今までどこに潜んでいたのか。とけ始めた北極の氷の中にいたという説もある。 

 ▼その信憑性は分からないが、万一そうであれば、温暖化を放置してきた過ちが今の難局を招いたことになる。経済優先という絶対的価値観でさえ、ときに見直す謙虚さがなければ人類は生き残ることができないということだろう。