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大言小語 不動産潤すイノベ

 去る11月下旬、ベンチャー企業で総務・経理を担当する若手社員と話す機会を得た。会社が急成長し、人数が増えるに従って、コワーキングスペースからシェアオフィスと床面積を拡大していった。そして、ついに自社オフィスを持つようになった。念願の自社オフィスだったが、思わぬ苦労をすることになる。

 ▼オフィスの管理業務にかかる負担が増加したのだ。警備や清掃などの契約を自社でしなくてはならなくなり、そのための人員を雇うことになった。ベンチャー企業にとって、オフィス管理のために人員を増やすのは大きな負担となる。コワーキングやシェアオフィスであれば運営会社がやってくれるので、こうしたコストはかからない。この若手社員は、メリットを改めて実感したと話す。

 ▼最近、コワーキングやシェアオフィスが日本には足りない、だからイノベーションが起きないという話を聞くことが多いが、その話に今ひとつピンとこなかった。ベンチャー企業に余計なお金をかけず、事業の成長に集中できるという点で、イノベーションをバックアップする機能がある。

 ▼コワーキングやシェアオフィスが伸びるのは、床面積当たりの賃料が高くても人を雇うコストよりはるかに安いというベンチャー企業の切実なニーズがあるからに他ならない。イノベーションが起きやすい環境は、不動産企業を潤す環境とも言えるのではないか。