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大言小語 言葉を狩るな

 何だか、息苦しい世の中になってきた。プロ野球中日ドラゴンズの応援団が使っている「サウスポー」という応援歌について、歌詞にふさわしくない箇所があるとして、球団側は歌詞の変更を求めた。中日ファンだけでなく、多くの人々がその賛否をめぐるSNSの議論に参加し、いわゆる〝炎上〟となった。

 ▼この「サウスポー」は、あのピンクレディーの同曲の替え歌。チャンテ(チャンステーマ)といわれる、味方がチャンスの時に皆で歌って、得点を願うものだ。その中に「お前が打たなきゃ誰が打つ」という歌詞があり、これについて選手への尊敬の念がない言葉を子供が歌うのはどうだろうと、同球団の与田剛監督が球団に投げかけたことから起きたようだ。

 ▼全くもって理解に苦しむ。そもそも、お前は「御前」で……といった論を持ち出すまでもなく、野球の応援などは好きにやればいいもの。「サウスポー」で使う「お前」は、一発チャンスの時に、グラウンドもスタンドのファンも一体となって応援する、その近しい感じを表している。言葉を換えれば、選手へのリスペクトが増進するわけではないのだ。

 ▼まるで小説「1984」のニュースピーク(管理国家で使われる公式言語で、政治的意味が排除されている)のように、言葉を狩っていくと、残ったところには肝心のファンも残っていなかったという笑えない話になるのでは。