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社説 拡大するシェアハウス 今やニッチでも異端でもない

 シェアハウス市場が順調に拡大を続けている。日本シェアハウス協会の調べによれば、07年から17年までの10年間で事業者数は30社から350社へ、棟数は580棟から4000棟へ、室数は3900から2万5500へと増大の一途である。

 当初(00~05年頃)は家賃水準が高い東京で、低家賃を求める若者らが利用する特殊な居住形態と見られていたが、今や多様な価値観のもと様々な層が利用するようになり、地域も全国に拡大しつつある。同協会の会員(182社)も現在は北海道から九州まで全国にわたっている。

 シェアハウス市場拡大の背景には何があるのだろうか。ペットと共に暮らすペット共生型や、外国人と友達になり語学を習得するための国際交流型など様々なコンセプトがあるが、低家賃ではなく、そうした付加価値を求める層の拡大が大きな要因と見られている。今やシェアハウスは一般の住まいでは実現できない機能や楽しさを求める人たちの新たな居住形態として定着しつつある。

 もう一つの背景が単身世帯の増加である。今や我が国の世帯構造は激変し、かつて標準世帯といわれた「親と子世帯」に代わって、単身世帯が最も大きなシェアとなり全世帯の3割強を占める。40年にはそれが4割近くにも達するというから、冷静に考えれば極めて異常な事態である。

 高齢者、生涯独身者、離婚者など単身世帯の増加がシェアハウス隆盛の陰にあることは間違いない。現に近年は若者だけでなく、離婚者、母子家庭などがシェアハウスの利用者として増えつつある。つまり、シェアハウスは増え続ける単身者(または小世帯)の受け皿としての役割が増している。単身世帯の増加は地域社会のコミュニティ形成を難しくする。なぜなら、これからの単身世帯は若者から高齢者まで多様な世代で増加するため、交流が難しい。経済基盤も生活の様式も考え方(価値観)も異なる世代だからである。単身世帯が全世帯の4割にもなれば地域が疲弊し、コミュニティ消滅の危機にさえあるといっていいだろう。

 抜本的対策が必要だがシェアハウスのように、ある一つのコンセプトのもとに単身者同士が集い、共同生活をしていく形態は注目に値する。中でも高齢者から若者まで多世代が一緒に暮らし助け合う〝多世代共生型〟のシェアハウスは今後の日本にとって特に重要な社会的役割をもつはずである。生活スタイルが異なる多世代だからこそ一つ屋根の下で助け合うことができる。

 今やシェアハウス市場はニッチでも異端でもなく、これからの日本社会にとってなくてはならない新たな居住形態として認識する必要があるのではないか。そのためにも、業界と自治体・国が協力し、その健全な市場育成に向け努力するときである。