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大言小語 花首から散る椿

 サザンカを除けば、ツバキ科の花が今咲き誇る。オトメツバキ、シラタマツバキ、ヤブツバキ、ワビスケツバキなどである。花の色は乙女椿が桃色、藪椿と侘助椿は紅色と白色の2種類。白玉椿はその名が示すように純白で清楚な一重咲き。その美しさはこの世の物とも思えぬ神秘さだが、ある日なんの前触れもなく、首が落ちるように花が散る。

 ▼同じツバキ科なのに、山茶花は花首ではなく花びらが散る。花に限らず、よく似ていても、その本質がまるで違っていることがある。例えば、今話題の「安心R住宅」だが、安心と安全は本質的に似て非なるものである。安心はやすらかな心の状態を差すが、安全は安全装置という言葉があるように一定の物理的状況の保証や、危険を回避するための工夫を意味するものである。つまり、「安心R住宅」は、住まいを安心して選ぶための制度だが、物理的な安全性を保障しているものではない。

 ▼それにしても昨今は「安心・安全」という言葉が安易に使われ過ぎている気がする。まして人の心の状態を示す安心は、「安心立命」(あんじんりゅうみょう)という言葉があるように、究極的には信仰によってのみもたらされる。

 ▼むしろ、なんの不安もない人生はありえないし、面白くもない。なぜこの世に何万種類もの花があるのかは永遠の謎だが、花々が人の心を癒すのは、その色や形、散る様に秘かな違いを宿しているからだろう。