総合

大言小語 声を届けて

 人はペラペラしゃべるよりも寡黙なほうが良いと聞く。沈黙は金ということわざもあり、英語でも、訳すと「雄弁は銀、沈黙は金」という言葉があるそうだ。しかし、常に沈黙していることが素晴らしいかというと、そうではない。

 ▼7月初旬に国税庁長官に就任した佐川宣寿氏。通常、長官に就任した場合、数週間以内に就任会見を開くのだが、既に1カ月が過ぎても音沙汰なし。そして、ついに国税庁は「就任会見は諸般の事情により開かない」と発表をした。会見を開かないのも異例だが、開かないことを発表するのも異例中の異例だ。

 ▼佐川長官の顔は多くの人におなじみだろう。財務省理財局長のときに、いわゆるモリトモ問題で国会答弁に何度も立ち、事実確認や記録提出を拒んで批判を浴びた。理財局長から国税庁長官への就任は過去にも例があるのに、多くのマスコミは批判している。会見を開くと任務と関係のない質問が多くなり、会見の目的が果たせない恐れもあり、こうした措置となったのか。

 ▼しかし、長官の納税に対する本心が聞けないのは極めて残念だ。それを国民に届けることができない、国民の反響も分からないでは得をする人がいない。国税庁の役割は「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」(同庁HPより)ことにある。今後は様々な機会を捉えて長官の声を届けてほしい。