総合

大言小語 人口の割り振り

 地方創生の掛け声とは裏腹に東京一極集中が加速していることを図らずも映し出したのが、政府の審議会が示した「衆院小選挙区の新しい区割り案」だ。一票の格差を2倍未満に抑えるため、青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島で1選挙区ずつ減らす「0増6減」とし、全国97選挙区で線引きを見直して区割り変更を行うものだ。

 ▼20年の人口を推計して、最も少ない鳥取1区(約27.7万人)を基準に、選挙区の区域を割り振りした苦心の策である。結果、1.999倍の東京22区を筆頭に、一票の価値が軽い10傑のうち7つを人口の多い東京の選挙区が占めることになった。おかげで東京23区内17選挙区のうち変更がないのは2つだけで、実に複雑な形となる選挙区もある。現在、渋谷区と中野区は東京7区だが、新区割り案では「品川区(3区に属さない区域)、目黒区(5区に属さない区域)、渋谷区、中野区の一部、杉並区の一部」と5区にまたがる。渋谷区を核に周辺区から寄せ集め所帯のような何とも珍妙な形である。

 ▼これまで世田谷、大田、練馬、足立など人口の多い区で分割、都心は2~3区を合わせて小選挙区としているが、ここまで細かく切り刻まれると住民の気持ちは複雑だ。行政区よりも狭い選挙区でころころ変わり、「地域の代表」が分からなくなる現実もある。一票の格差解消は、選挙制度の問題点を浮かび上がらせる。