政策

社説 不動産税制の抜本的見直し必要 20年以上にわたる地価下落は異常

 マクロでみれば、日本の地価は下がり続けている。今年の基準地価調査によれば、全国の住宅地地価は96年以降をみても21年連続の下落である。商業地もミニバブルといわれた07年の1.0%上昇を除けば下落基調が続いている。

 確かに、直近の7年間は0コンマ以下のレベルで「下落幅が縮小」しているが、それはいわば地底を這い続けるような動きであり、将来の反転を約束しているようなものではない。

 このような20年以上に渡る地価低迷という異常事態に対し、不動産税制を抜本的に見直すべきではないかという声が上がらないのが不思議である。

 土地は消費財ではないから、価格(資産価値)が上昇しなければ買い意欲は盛り上がらない。売買による土地所有権移転登記件数をみれば歴然としている。首都圏でさえ15年の前年同月比は5月までがほぼ横ばい。6月に15%増となったものの、その後は10%以下に落ちてきている。今年(5月までの統計)になってからは0%前後の増減を繰り返している状況だ。

 我が国にあっては、土地も〝商品〟だから、かつ内需の要となる商品であるから、その取引が沈静化しているのであれば、土地市場活性化のための対策が打たれて当然である。住宅政策としてはローン控除や新築住宅の固定資産税軽減措置などが継続されているが、今後は根底にある土地に対する税の大胆な軽減にも踏み込む必要がある。

 なぜならば、これから日本は人口減少、少子高齢化がいっそう加速する。土地に対する税負担を緩和して、少子高齢社会に見合ったまちづくりを推進していかなければならない。なかでも、後期高齢者が急増する大都市では地域包括ケアの推進が急務であるし、地方都市ではコンパクトシティーの整備が不可欠となっている。

 こうしたまちづくり、地域再生を急ぐためには、取得、保有、譲渡の各段階で課税している多重課税が果たして今後の日本社会にあってもふさわしい制度かどうかも検討されなければならない。例えば固定資産税など保有に対する税は、その土地がどのような用途に使われているかによって税負担を峻別すべきではないか。社会が必要としている用途に供される土地については緩和し更地などについては強化することもやむを得ない。

 また、住宅が個人資産の大半を占める日本にあっては、その固定資産税についてはアパートや店舗などの収益資産とは異なる体系が導入されるべきと思う。業界団体、不動産関連の学会などによる幅広い議論を期待したい。