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社説 大規模な熊本地震が発生 再び受けた試練、生かせ

 4月14日に発生した熊本地震。最大震度7を観測した後も、震度4以上の余震が間断なく続いている。地震の危険度が比較的低いとされてきた九州エリア。「まさか」の出来事に、住民たちの驚き、そして恐怖は想像に絶するものがあるだろう。今いる建物が壊れるかもしれない不安の中での生活は、とてつもないストレスになっているはずだ。自然頼みにはなるが、早くこの余震が鎮まることを願うほかにない。

 「安心して生活するための建物だが、決して命を守ってくれるものではない」。過去の地震被害の教訓を基に、より強い住宅、より安心できる住宅づくりに業界関係者は知恵を絞ってきた。しかし今回も、その努力が十分報われたとは言い難い。多くの建物が倒壊し、多数の死者・けが人が発生した。強い余震が続いているため、建物自体にダメージが蓄積されたと見られる。また、台風が多いエリアだけに、重量のある屋根が多かったという背景もあるようだ。更に、大元となる地盤がズレてしまっては、いくら強固な建物だったとしてもなす術がなくなる。

 被害を100%食い止めることは不可能だ。いかに100%に近づけるかが重要となるわけだが、それに向けて業界は不断の努力を行ってきた。そして今回、詳しい被害検証などはこれからになるが、再び受けた試練によって業界は更に一歩前進するはずだ。その勇気と英知を、我々日本人は持ち合わせている。

自身も被災者ながら

 避難生活者は、最大で20万人近くに上った。相次ぐ余震、いつ倒れるか分からない建物への恐怖の中、多くの被災者が肩を寄せ合い生活している。被災者の中には、住宅・不動産関係者も多数いるようだ。自身が被災しているにも関わらず、入居者や管理物件の状況を見て回る〝魂〟ある行動をしているという。また、業界を問わず、全国から多くの支援の手が差し伸べられている。その「真心」を無駄にしないためにも、現地での受け入れ体制やスムーズな配給システムの構築に、行政は最大の関心を払うべきだ。

 今後、地震が鎮まり復旧に向けて動き出すとき、業界関係者には住宅再建や街づくりで多くの期待が寄せられることになる。東日本大震災の復旧・復興活動で見せている「底力」を、今回も発揮する時だ。そして、我々個々人は、今後も起こるであろう地震に備えて、再度足元を見つめ直す必要がある。食料・水の確保、家族との連絡方法の再確認は必須だろう。また、行政も「万が一」の体制がいつでもスムーズに構築できるよう、日頃の訓練とシミュレーションを怠るべきではない。