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大言小語 民族としての絆

 2月に発表された15年国勢調査で、日本の人口減少が裏付けられた。この5年間で94万7千人減少した。区市町村で最も人口が多い東京・世田谷区の人口88万人を上回る規模だ。47都道府県のうち、39道府県で人口が減少している。

 ▼人口が減少していく時代の町づくりには、人を引き寄せる力が必要になる。逆に人を引き抜かれたエリアは、さらに人口が減る。過酷ではあるが、それが実態だ。しかし、十数年後には全都道府県で、数十年後には全区市町村で人口が減り始める可能性がある。そのときには、どんな努力が求められるのだろうか。

 ▼もはや、区市町村が人口引き抜き合戦をしている場合ではないだろう。日本人が一丸となって、日本全体の魅力づくりを真剣に考えねばならないときである。観光スポットを増やして外国人観光客を増やしたいという話ではない。むしろ日本人が外国に出掛けていき、日本という国の魅力がどこにあるのかを学びに行かなければならない。

 ▼人口が減少し始めている要因は女性の社会進出などいくつか考えられるが、日本人が民族としてのレーゾンデートル(存在意義)を見失いつつあることも起因しているのではないか。その背景にあるのが〝家族の絆〟の希薄化であり、それが単身世帯の増加を招いている。単身世帯が標準化していく日本に、民族としての絆が復活する日はくるのだろうか。