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大言小語 スキャンダルにするな

 「人間を幸福にしない日本というシステム」などの著書があるオランダ人ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、「日本ほど一般の人々がその職務に熱心な国は世界のどこにも見当たらない」と述べている。推察するに、日本以外の国の人たちは仕事に対する考え方が日本人よりもドライで、合理的で、価値観が柔軟なのではないか。それに対して日本人の仕事に対する姿勢は、ときに家庭を犠牲にすることもやむを得ないと考えるほど信仰的で、奉仕的で、探究的でもあるのだと思う。

 ▼だから、横浜市のマンションで基礎杭が適切に施工されていなかった今回の事件に対する世間の目は厳しい。それも、建物の安全性に関わる仕事で不正が行われていたという事実は、ウォルフレン氏の見方を返上しなければならないほど深刻である。ただ、マスコミとして気をつけなければならないのは、今回の問題はスキャンダル性を追及する性格のものではなく、その背景に横たわる本質的課題に目を向けなければならないということだ。

 ▼現時点で分かっている〝本質〟は2つある。建築業界における重層的下請構造がその一つ。末端にいくほど利幅が削られ、工期などの条件も厳しくなる。もう一つは〝姉歯事件〟でもそうだったが、建築確認制度と中間検査・完了検査だけでは故意の偽装を見抜くことができない現行建築法制のあり方そのものである。