政策

社説 地方創生に不可欠 「地域主権型道州制」の検討を

 地方創生の動きが本格化している。政府が6月末に閣議決定した地方創生基本方針に日本版CCRC構想の推進が盛り込まれたのもその一つだ。

 山崎史郎内閣官房まち・ひと・しごと創生本部統括官は同構想について「施設をつくって高齢者に来てもらう従来の発想とは大きく異なる。第二の人生で何をしたいのか、その思いが一致した人たちが集まり、力を合わせその実現に責任を持つ人たちのコミュニティだ」と説明する。高齢者を弱者と捉える従来の発想のまま、地方移住を促しても地方創生にはつながらない。

都会と地方が連携

 7月11日には、「地方創生・交流自治体連携フォーラム」の初会合が北海道名寄市で開かれ、都会と地方の自治体連携に新たな可能性を探る動きも始まった(1面参照)

 この都市と地方の連携こそ、地方創生の鍵となる。東京圏では若い世代が良質な住宅を取得するのが難しい。一方、地方では近年は求人倍率が上がるなど雇用環境も改善している。つまり、双方が連携すれば人口の対流が起こる可能性がある。問題は、自治体間が合意し、新たな取り組みを行うとしても、しばしばそこに法律などの規制が立ちはだかることだ。

 例えば杉並区が南伊豆町に特別養護老人ホームを建設するプロジェクトにしても、軌道に乗せるまでには厚労省はもちろん、東京都や静岡県という上位団体との協議を何回も重ねる必要があった。結局、今回は両自治体が既に長年の交流があるということで特例として認められることになった。

国の統治機構を変える

 地方創生は基礎自治体である市区町村の自主性、独創性、計画性がなければ実現しないことは明白だ。今、地方が策定中の総合戦略の審査でもその点が厳しくチェックされる。そうであればその見返りに今後は地方への権限移譲、財源譲渡が重要になることは当然である。今回は、総合戦略が認められた自治体には〝新型交付金〟が支給されることになっているが、その効果を見極めた上で、より本格的な制度改革、具体的には「地域主権型・道州制」の検討に向かうことを期待する。

 道州制はその名称から「道」や「州」に大きな権限が付与され、住民に密着した行政サービスが切り捨てられるといった誤解がある。しかし、地域主権型道州制は全く逆で、基礎自治体の市区町村が生活・福祉・住宅・子育てなどに関するあらゆる行政サービスを行う。州政府は河川や広域道路の計画・整備、災害復旧などを担う。今こそ、国の統治機構を変えるチャンスである。