政策

社説 新卒で入社する皆さんへ 「大志」忘れず働く喜びを

 4月、住宅・不動産業界に新たに吹き込まれる息吹。今年も多くの新卒者を迎え入れる。言うまでもないことだが、人間が生活する上で大切な基盤となる「住」の仕事。そのやりがいは計り知れない。今抱いている「大志」を忘れることなく、新卒者の皆さんはこれからの毎日を躍動感あふれる感覚で送ってほしい。

 理想と現実に戸惑うことは必ず出てくる。これからの実社会こそが「現実」。社会に出る以上、その受け入れは必要だ。ただ、現実だけに染まってしまえば「新たな息吹」にはならない。現実を自分なりにうまく吸収し、理想と何とか適合させるよう努力することが求められる。焦ることなく、じっくりと取り組んでいただきたい。そして企業側も、「貴重な新卒者を育てる」という責任を自覚すべきだろう。

 ここ数年、業界は「過渡期」が続いている。「フローからストック」「省エネ対応」「高齢者向け住宅の建設」「急増する空き家対策」など、問題解決のために過去からの転換を求められること、急ピッチで進めなければならないことなど課題が山積みだ。今後の少子高齢社会の進展、人口減少を考えると、これまでとは違った観点での住宅政策、住宅供給が求められている。過渡期における宿命だろうが、課題に対する解決状況は「一進一退」だ。ただ、新たに法律が施行され注目が高まっている「空き家」については、早期に抜本的な対策を取ることが求められている。今後、国全体の住宅政策の根幹にもなる問題だ。業界に属することになった新卒者の皆さんには、直接空き家問題にタッチすることがなくとも、業界人としてこの課題に対する何らかの考えは持っておいてほしい。

当然だが仕事は大変

 「住宅を建てるだけでは、もう売れない」と言われ続けて10年以上になろうか。さすがに以前ほどではないが、いまだにその感覚のままの会社も見られる。一般消費者を相手にした商売で見ると、取り扱う金額としてはこの業界は最上位に入る。必然的にその責任も重くなる。だから仕事が大変なのは当然だ。単なる物件紹介だけを仕事とは呼べない。売り上げ重視の考え方もいかがなものか。

 4月から、宅地建物取引主任者の名称が「宅地建物取引士」に変わる。宅建業法も改正され、求められる能力や責任の幅も広がった。業界全体の地位向上、資質向上へとつながることは間違いない。この大きな転換点となる節目の年に、皆さんは仲間入りした。先輩方も燃えているはずだ。1年後、「住宅・不動産業界で働く喜び」について、堂々と後輩たちに説明している姿を期待する。