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大言小語 夢は大きく

 扉を開けば、新しい世界が広がる期待感。22年前、田舎の片隅で育った18歳の青年は、4月から始まる東京の新生活に大きな期待と夢を膨らませていた。すっかり中年になってしまった今、当時の自分に微笑みながら語りかけたい。「ごめんね、これが現実だよ」と。

 ▼「経済再生」「女性活用」と共に、安倍政権の大きなキーワードである「地方創生」。子育て・若者世代に地方の魅力を伝え、定住してもらうことで地方を活性化させる施策だ。確かに、都会にはない大きな魅力が地方にはたくさんある。「広々とした庭」「自然あふれる環境」「ゆとり感ある生活」。ギスギスしがちな都会生活者から見れば、『憧れ』と映る光景に違いない。

 ▼ただ、都会が嫌だから、疲れたから、といった理由だけで「田舎暮らし」を選択するのはいかがなものか。実際に田舎で生まれ育った身から言わせてもらうと、田舎もそんなに甘くはない。人間関係など難しい場面に出くわすこともある。数カ月後には「想像と違った」と、再び都会へ戻るといった話も聞く。

 ▼「若かった」と言えばそれまでだが、今思えば恥ずかしいほど大きな夢を抱き、理想に燃えていた。でも、それくらい「高望み」していたからこそ、「その半掛け」の今があるのだろう。現実は理想の半分程度だろうか。だから、夢は大きい方がいい。さて、若い頃とは一味違う、円熟味のある夢を追うとしようか。