住まい・暮らし・文化

おためし移住 ワープステイという提案(3) 交流が日本を救う(下) 健康寿命伸ばし、社会保障費削減

 都会のアクティブシニアの地方への大移動(ワープステイ)を起こすためには、まず地方でのハード、ソフト面の受け皿整備が必要である。ハード面では全国約6000万世帯のうち、約600万戸(10%)が空家であり、そのうち約100万戸は大修繕をせずに使用可能といわれる。

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コンシェルジュを配置

 それらを有効活用するとともに、地方の不動産業者、役場、地方代表者などが「ワープステイコンシェルジュ」として連携をとり、空家対策は所有者個人のためだけでなく、部落のため、日本のために重要であるという認識のもとに活動することが要請される。空家の修繕費の補助金の拡大及び税制面での配慮なども大いに望まれる。

 一方、今東京都の杉並区が長年交流のある静岡県南伊豆町に同区の特別養護老人ホームを建設する計画をして、静岡県・厚労省も参加して打ち合わせをしている。

 この計画は行政の数々の壁を破る画期的なものであり、是非実現してほしい。つまり、杉並区にとっては、大変ローコストで施設が整備できるとともに、南伊豆町としては〝安定した定住者〟と〝介護職員の雇用の創出〟が可能になる。今後、日本の都市の高齢者問題と地方の過疎化を同時に解決する有力な手法であり、全国的に拡がることを期待したい。

介護問題との関係

 この動きと、我々が提案するワープステイとの関連であるが、後期高齢者にとって不幸にも要介護になったとき、〝住み慣れた都会〟だけでなく、かつてワープステイしたことがある地方であれば、本人も子供もその地方になじみがあり、抵抗なく入所できると思われる。

 また、厚労省が進めている都会における在宅介護及び地域包括ネットワークの推進についても、訪問医師とともに、介護予防の知識をもったワープステイ経験者のアクティブシニアが、見守りボランティアとして地域を支えることが可能となる。

 このように、これからの数十年間、1000万~1500万人存在する前期高齢者がリタイア生活に入り、今までの数々の縛りから解放され、自分の好みの地方に、数年定住し、日本の国土保全という〝生きがい〟を持ち、心身ともに健康になり、健康寿命を延ばしていくことは社会保障費の削減にもつながる。日本の高齢化対応、アンチエイジングの一つのモデルとして、非常に重要な役割を果たすことができるであろう。

大規模タウン構想

 空き家対策とともに、東日本大震災の復興拠点として、あるいはゴルフ場などのリゾート地の活性化として、介護施設を含んだワープステイを中心とした5000~1万人規模のワープタウンも将来的にはありうるのではないだろうか。

 そこでは消費産業とともに、介護予防のためのゲーム、介護補助(リハビリ)のロボット産業の誘致、さらに地元産品を使った食材工場、健康・美容のアンチエイジングの情報発信基地などが有機的に結合した複合タウンが可能ではないだろうか。これは地方の定住人口を増やし、田畑、里山を再生し、シニアの活性化(生活習慣病を治し要介護率がダウン)、若者の地方での職場づくり、出生率の増大なども可能にする。

 同時に、都市圏の急速な高齢化対策にもなる。こうした、実に多面的な〝ワープステイ〟運動が、日本の恵まれた自然を生かすとともに、高齢者を元気にし、日本再生の切り札になることを心より祈念したい。(ワープステイ推進協議会理事長・大川陸治)