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大言小語 慎重かつ精緻に

 先週のこと、自民党本部に行く道は、多くの市民で埋め尽くされ、予定より到着が遅くなってしまった。特定秘密保護法が参議院の国家安保委で強行採決された日だ。太鼓の音に合わせ「キョーコーサイケツ、ゼッタイハンタイ」と叫ぶ様は、一昔前のデモというより、サッカーのサポーターの乗りでもあった。

 ▼たまたまなのだろう。社会科見学で国会に来た小学生が各地から大勢来ており、目を白黒させていた。中には、ふざけて一緒に「ハンタイ、ハンタイ」と叫ぶ子供もいた。一つの話を思い出した。

 ▼60年安保騒動のとき、首相の岸信介は激しいデモにあっていた。「アンポハンタイ」と叫ぶ学生らの人の波は今日の比ではなかった。そんなとき、岸の孫は幼児で「アンポハンタイ、アンポハンタイ」と家の中でふざけて叫んでいたという。家人はたしなめようとしたが、岸信介はにこにこしながら見ていたという逸話だ。そしてその孫は、今や1強政党の総裁、日本国首相として、特定秘密保護法反対派と対峙した。

 ▼国の防衛安全上必要な措置は当然とるべきだが、特定秘密の範囲が曖昧で、秘密の公開が60年を上限としながら7項目の例外を設けるなど永久に知ることができない項目があるほか、総理の答弁でいきなり新機関名が飛び出すなど拙速さは否めない。法案は成立したが、更なる精緻(ち)な仕組みと検証が必要だ。