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大言小語 平等とは何か

 先日、最高裁が口頭弁論を開き、婚外子の相続格差規定について違憲判断をする方向となった。民法900条4号但し書きはかねてから法の下の平等を定める憲法14条に違反しているのではないかと指摘され、国連からも何度も改善を求められていた。

 ▼この記事を書いていたらふと30年ほど前のことを思い出した。この4号但し書き規定について、「前近代的な規定が残っているんだなあ。改正しなきゃ」と小子の母に言ったら、こんな言葉を発した。「そんなこと認めたら、変な女が男をたぶらかすじゃないの」――。こんな物言いをすることはこれまでになく、驚いた覚えがある。その口ぶりはいつもと違い、法律婚を尊び、乱れを指摘する保守派の主張そのものだった。

 ▼学業が好きだった母は大学への進学を望んだが、「女に学問は要らん」という保守的な父親に反対され、就職した。それもあって、彼女の支持政党はリベラル系だった。そんな人が冒頭のような考えを示したことに、小子は思想の多様性を改めて感じた。それが現在の職業を選んだきっかけにもなった。

 ▼時は流れて母は今、老人福祉施設に居る。表情もあまり見せなくなったが、この秋にも出される判決について聞いたら、また、怒って元気を出すだろうか。なぜか、昔を思い出したのは、苦労ばかり掛けた不肖の息子の自責の念かもしれない。