総合

大言小語 無理な前進

 ある業界の方の話を聞く機会があった。経営者らしく自信あふれる話しっぷりではあったが、自身が生み出したビジネスモデルがやや陳腐化し、曲がり角に来ているので、また新しいものを考えていると。「常に変化、進歩していかないと業績は上がらない」

 ▼経営とは難しいものと改めて感じたが、やや首をかしげることもあった。話の中で、自らのモデルに他社も入り込んでいるが、他社は差別化しようとして顧客サービスに必要経費を使っている、我々は、そうした経費を削減するためにサービスは使わない、もっと、コスト安で利益率の高いものを目指すという話があった。顧客や従業員を人でなく、自らの道具として扱うような表現もあり、気分がやや悪くなった。

 ▼変化や進歩を目指さないと人間は退化してしまう。ただ、2次元的に言えば前に進んでいるようでも、3次元的に見ると前ではあるが斜め下に行っていたり、明後日の方向に向かうこともある。動かないでいたら、周りが飛び交って、結局自分の位置が高くなっていることもあるかもしれない。

 ▼現在の位置に留まることでさえ、常に改良、改善をし続ける必要がある。その上での変化が必須だ。無理に前に進むだけが経営の在り方とは思えない。しっかりとした倫理観、社会観を備えてこそなどとつらつら考えるのだが、経営者とは程遠い小子には分からない世界なのだろう。