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前田武志・国土交通大臣と政策を語る 第5回 大和ハウス工業会長・樋口武男氏 ②

(①はこちら)

樋口会長 ところが、現状は、住宅の価値が下がる状態が続いていて、これではダメです。我々は開発も建築も行っていますが、総合特区については、官が主導しないとできません。ですから官と民、一緒にやることが重要です。

 前田大臣 官主導と言われたが、むしろPPPやPFIなどで民のノウハウを生かすこと。ディベロッパーから住宅メーカー、流通、建材、更に金融も入ってコンソーシアムを組むことにより民間のノウハウを活用して全体をマネジメントすることが重要です。

樋口会長 当社はプロジェクトチームをつくってPFIと大いに取り組んでいます。学校も役所そのものも手がけていますが、行政にも『横串』を入れてください。

 前田大臣 それを私はいつも言っています。国交省の中は「横へ横へ」、厚労省の福祉政策などとタイアップするときは「外へ外へ」と連携を広げていくことが必要です。

樋口会長 もう一つ大事なのは景気対策です。今、消費税引き上げを行ったら、経済はとんでもないことになります。そしてデフレ政策をやめ、多少なりともインフレ政策にもっていってもらいたい。そういう舵取りは民だけではできません。政治主導で行ってもらいたいと思います。

モデルを実現するには

 前田大臣 先ほどの岩手県の環境未来都市構想というのは、民間のアイデアをベースにまとめたものです。

樋口会長 当社が海外で行っているプロジェクトもほとんどが民間だけで取り組んでいます。たとえ55万平米の団地でも。ただ、被災地の『ユートピア構想』は1社だけではとても難しい。4、5年でできないと夢がなくなりますから、官民協働も含めて、業界を挙げてスピードを持って取り組みたい。

 前田大臣 ディベロッパーや住宅メーカーなど、さらにリチウム電池などの専門会社が一緒になってコンソーシアムを組むことで、情報が多次元化して立体的なものになっていくのです。特区などの枠組みをつくり、コンセッション方式を導入する。そこからが民間の仕事です。大いに進めていきたいと思います。

 まずは東北でモデルとなる成功例を早くつくろうと呼びかけています。モデルが見えてきたら、今度は全国に展開することができます。

樋口会長 大阪・堺市に「晴美台」という65戸の団地を開発します。ネットゼロエネルギータウンで、街全体でエネルギー収支がゼロになる街づくりです。もちろん無電柱で緑化計画、再生可能エネルギー、リチウムイオン蓄電池、HEMS。小規模モデルですが、これを全国に持っていけばいい。そうすれは、夢のある大きな街、未来都市が実現していきます。

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 「前田大臣と政策を語る」シリーズは今回で終了します。「いまこそ前を向いて進もう」企画は今後も随時掲載します。