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社説 区分所有法は限界か 容積や資金面での支援必要に

 秋の臨時国会へ先送りとなった改正区分所有法案は主な改正履歴としては83年と02年に次ぐ3回目で多数決要件の緩和も最終段階に至った感がある。

 例えば改正要綱によると建て替え決議の要件は、現行は区分所有者と議決権の5分の4以上だが一定の要件を満たせば4分の3以上に緩和される。要件も、(1)地震や火災時に安全性が保てない(2)老朽化して外壁がボロボロ落ち周辺に危害を及ぼしかねない(3)給排水管が劣化して衛生上有害になるおそれがある――など至極当然なものばかりだ。もちろん4分の3(75%)でもハードルは高いと思うが、最後まで反対した者にとっては所有権を買い取られ、退去せざるを得ないという重大な権利侵害を受けるのでこれ以上の緩和が許されていいとは思えない。

 一方、共用部分の変更は、現行は区分所有者と議決権の各4分の3以上だが(規約で区分所有者については過半数まで減ずることも可能)、要綱では一定の要件を満たせば各3分の2以上で決議できるとしている。また、規約で区分所有者だけでなく議決権についても過半数まで減ずることもできるようになる。しかも集会の定足数が普通決議事項であれば〝過半数〟という制約さえもなくなる。

 分譲マンションのストックは現在約700万戸だが、81年の新耐震基準以前に建てられた旧耐震マンションが103万戸もある。また26年末には築40年を超えるマンションが170万戸、そのうち築50年超が60万戸にも達する。建て替えや大規模修繕工事の実施は待ったなしである。ただ多数決要件の数値による緩和がこれ以上は無理だとすれば、今後は容積率緩和や資金援助など公共による補助を厚くできるように、別途新たな法整備を検討すべきである。

 これについては、「マンションも戸建て住宅も同じ私的財産なのに、なぜマンションだけが優遇されるのか」という議論はあるが、マンションという建物の老朽化(更には腐朽化)は戸建て住宅以上に周辺にもたらす負の外部効果が大きいことを踏まえれば致し方ないものと考える。

 救いはある。ある専門家によれば、今後10~20年で築40~50年を迎える80年代後半以降の建物は第二次までの改正を受け適切な管理状況にあるため、随時改修を重ねていけば寿命をかなり引き延ばすことができるという。建て替えは解体費や建築費の上昇傾向を考えれば今後ますます現実味がなくなっていく。解体費のほうが土地代を上回る地域も多くなるし、建て替えを議論している間に建築費の高騰が更に進んでしまうことも考えられると警告する。しかし、たとえ寿命を延ばすことはできても永遠ではない。いつかは壊さなければならない日がやってくる。つまり、62年前に制定された区分所有法自体がもはや社会にそぐわなくなっていると見るべきである。