総合

「ワンストップ」の街

 「ワンストップ」はいまや便利なサービスの代名詞。「1カ所で用が足りる」ことは、需要者にとっては理想的である。民間企業は消費者を引き付けるために、物販から金融保険、健康・医療・介護まで幅広くその可能性に取り組んでいる。一方、「縦割り」「たらい回し」などと不評を買っていた行政サービスも自治体レベルでは「ワンストップ」を打ち出せるようになった。

 ▼だが、何でも「ワンストップ」でできるとは限らない。例えば、病気などの初期段階の時、専門医や病院への道案内などをする、かかりつけ『町医者』

のような機能は欠かせないが、高度な専門知識が求められる分野では、それが逆にサービスの低下や副作用をも招きかねない。生命や財産、そして名誉など、人間の尊厳に関する相談は、「ワンストップ」サービスには特になじまない。選別が必要だ。

 ▼いま注目されている「駅ナカ」は、「ワンストップ」の街である。JR東日本の東京駅などを見ると、駅構内にはファッション・物販から飲食、更に各種サービスなど、様々な店が立ち並ぶ。今後、ビジネス分野の拡充が見込まれている。日本で最も賑わう商店街兼ビジネス街の趣である。

 ▼対照的に駅前商店街は振るわない。旅先にはシャッター街と化したところも多い。「ワンストップ」の街は偏りを生む。地域全体の活性化とどうつなげていくのか。新たな難しいテーマである。