社説「住宅新報の提言」

内閣本府庁舎、大規模地震で倒壊の恐れ大

 国土交通省は8月25日、災害応急活動に必要な官庁施設の耐震診断の結果、393の施設のうち内閣本府庁舎を含む全国114施設で、大規模の地震で倒壊する可能性があるとする調査結果を発表した。

 調査では、耐震偽装事件でよく知られるようになった設計時の保有水平耐力(Qu/Qun)をベースに、建物の劣化などを加味した評価値を算出した。

 問題の114棟の内訳は、震度6強から7の大規模地震で倒壊する恐れが高いと考えられる「評価値0.5未満」が36棟、大規模地震で倒壊の恐れがある「0.5以上1.0未満」が78棟となっている。

 内閣本府庁舎の評価値は0.37しかなく、大規模地震で倒壊する可能性が高いが、建て替えを検討している段階にとどまっている。

 国交省では、問題となる114棟について、おおむね10年以内に、建て替えや改修で耐震性を基準値以上に引き上げる方針。国交省営繕部は、114棟は旧耐震基準をすべて満たしていることから、「震度5強までの中規模の地震で損傷しない設計になっている」と説明している。

 最も評価値が低かったのは、名古屋港湾合同庁舎別館で0.16(建て替え検討中)。2番目は四国地方整備局の庁舎で0.19(年度内に移転)、3番目は神戸第2地方合同庁舎で0.23となっている。

 神戸第2地方合同庁舎は、阪神淡路大震災で震度6強を経験したが、簡易な修繕のみで現在も使用できているという。

【今週の視点】
 戦後60年、日本の建築物が少しづつ悲鳴をあげている。欧米では100年住宅が当たり前だ。しかし、猛スピードで走り抜けた日本の高度経済成長時代。人間の体同様、そのころの無理が老朽化を早めているのかもしれない。
 当時は、建設ラッシュでモルタルを作る砂が不足し、海砂を多用したとも聞く。その塩分が引き起こす鉄筋のサビにより、建物の中から砕けてくる。
 健全な体を作るには、健全な精神がまさしく問われているのかもしれない。