社説「住宅新報の提言」

安心な生活設計は業界の役割

高まるローン破綻リスク

 リーマンショックから2年が経過した。サブプライムローンに端を発した金融不況から、米国では住宅ローンの返済が滞り、住宅の強制売却を余儀なくされる住宅ローン破綻が後を絶たない。ローン破綻(たん)は、米国に限った話ではない。不況にあえぐ日本でも同様に深刻だ。先般も一般住宅の競売が増加したことを受けて、住宅ローン破綻が増加しているという報道があり、注目を集めたばかりだ。リストラで職を失ったり、給与・賞与がカットされるなどで滞納や返済不能に陥る消費者が今後も更に増える可能性は日本でも高いと見られる。

頼れない資産

 90年代後半から見られた「ゆとりローン」に代表される当初の金利を低利に抑える代わりに後の金利が跳ね上がるローンを組んだ人たちが最も危険だといわれる。11年目以降の金利が上昇するゆとりローンの場合、低利の期間が過ぎた現在、皮肉にも世界不況と重なり、破綻リスクは高まるばかりだ。
 先の都道府県地価調査では、下落幅こそ縮小したものの、依然として地価下落が続いた。ノンリコースローンが一般的な米国と違い、担保を処分しても残債が消えないのが日本のローンの特徴。返済に行き詰っても、住宅資産も充てにできない状況で、資産価値の下落はローン破綻に追い打ちをかける。地価下落は、経済を停滞させるだけでなく、国民生活を直接脅かしている。
 1年前に住宅金融支援機構が金融機関に実施した「民間住宅ローン」の貸出動向調査によると、金融機関が懸念する住宅ローンの問題(リスク)の1位と3位に、延滞の増加が挙げられた。1位は景気低迷による延滞増加、3位は金利上昇局面における延滞増加だ。ローン滞納に対する金融機関の警戒心も高いことが伺える。

定年後にもリスク

 長引く不況で足元のローン破綻ばかり取りざたされるが、長期的に見れば、破綻リスクは遠い将来にも控えている。
 晩婚が増え、定年後もなおローンの返済が続くケースが多くなっているためだ。リタイアして年金が支給されるまでの収入がなくなる期間もリスクが高いと指摘するファイナンシャルの専門家は多い。
 ローン破綻が深刻化しているため、さすがに新築ではなく中古を選んだり、将来の返済が見通せる長期固定ローンを選ぶなど、慎重な消費者も増えつつはある。しかし、ローン商品の多様化で判断に迷う消費者もまた少なくはない。ローン破綻は原則、自己責任だが、消費者が安心できる将来の生活設計があってこそ、住宅を供給し仲介できることを、業界も改めて認識しておく必要がある。