ペット共生住宅 本物の追求へ『ペットフレンドリーホーム宣言』

“豊かな暮らしを育む”ペットフレンドリーホーム宣言とは?

日本愛玩動物協会は18年度から、「ペット共生マンションの適正化推進プロジェクト」をスタート。この一環として、「ペットフレンドリーホーム宣言」の取り組みを始めた。不動産や建設の住宅業界に向けて、宣言をしてもらうように呼び掛けている。同協会の取り組みに賛同・協力する企業や団体の実践を促す、いわば〝約束〟だ。その約束とは、ペットと暮らす生活によって、ペットやペットを飼う人、飼わない人までも豊かなものにすること。本当の意味での「ペット共生住宅」の姿を示す取り組みとなる。同協会の東海林克彦会長と、その宣言をいち早く他社に先駆けて行った旭化成ホームズ営業推進部の中村干城(たてき)部長に、両者の持つ共通の想いや、ペット共生住宅が生み出す幸せな暮らしなどについて、住宅業界に向けたメッセージを語ってもらった。

旭化成ホームズ株式会社 営業推進部長
中村干城氏

公益社団法人 日本愛玩動物協会 会長
東海林克彦氏

住宅業界全体の水準アップ

東海林会長 これまで全国に約17万人を輩出した愛玩動物飼養管理士をはじめ、適正な飼養方法やマナーを身に付けた人材を育成してきましたが、人とペットの双方にとっての豊かな暮らしの実現には、より適正な住環境が大切だと気付きました。しかし世の中のペット共生住宅を見ると、人やペットの視点への配慮が十分ではないようです。

中村部長 当社は98年に「くらしノベーション研究所」内にペット研究会を組成して以来、人とペットの関係性を学び、商品開発に反映しています。いずれも「プラスわん・プラスにゃん」を名称とする2000年の戸建て住宅、06年の賃貸住宅の発売は、その成果です。研究で導いた答えは、ペットそのものに加えて、飼い主との関係性や暮らし方の理解の重要性です。

東海林会長 人の育成と住まいづくりの両輪が、本当の意味の適正飼養につながります。子育てでいくら親御さんが気を配っても、環境が悪いと健やかに育たない。現状は、各社に個々の知見や技術はありますが、標準となる統一的な体系化がなされておらず、住宅業界全体の水準を高めてほしいと願っています。

中村部長 研究で得た知見を空間設計で生かして、商品づくりや販売段階まで落とし込んできました。最初から完成形はなく、顧客とのコミュニケーションを通じて最適な住環境を実現する手法です。

可変性ある住空間

東海林会長 その通りで、これを設置すれば、すぐにペット共生住宅になるといった固定的な答えはありません。アダプティブ・マネジメント(適応的管理)の考え方が大切です。課題や状況に応じて、柔軟に変化できる可変性のある住空間づくりが必要なのです。

中村部長 日本全体の水準の向上は、人とペットの住まいづくりを長年にわたり手掛けてきたトップ住宅メーカーの自負がある当社にとって、社会的な意義のある取り組みです。貴協会の持つペットに関する様々なノウハウを吸収しながら、住宅業界全体のレベルアップを図っていかなければならないと思っています。

東海林会長 ソフト面の管理運営のノウハウが、今まで以上に重要になります。最初からつくり込み過ぎなくても、運営と工夫でカバーできる面の大きいのがペット共生住宅の特長です。それらの実践を「ペットフレンドリーホーム宣言」を行った企業にお願いしたいです。

家族・社会・自然

中村部長 当社がいち早く「ペットフレンドリーホーム宣言」をしたのは、そうした東海林会長の考え方に共感したからです。日本では、人とペットの関係性が変遷しています。昔は番犬など防犯用などで飼いましたが、今では家族の一員となりました。しかし、ペットは社会の一員であり、そして、自然の一員という考え方が、次のステップとして大切なのです。

東海林会長 シックハウス問題をはじめとした健康被害防止のための住まいづくりは、今では当たり前のように普及し、健康に配慮した住宅が増えています。ペット共生への配慮も、同様に当たり前になると思います。

中村部長 本来、動物は光や風を感じて自然の中に生きます。しかし室内飼いのペットは自由に光や風を感じることができません。そのため、視線は遮りつつ太陽光や風を自由に感じることが可能な半屋外空間など、独自の空間設計で問題を解消しています。

新たな資格制度を

東海林会長 ペット共生住宅の基礎知識が特定の企業内で完結せず、住宅業界全体に広がってほしいのです。当協会は来春、新たな資格の「ペット共生住宅管理士」を創設します。当協会発刊のテキストなどを基に、ペット共生住宅のハードとソフトについて、しっかりと学べます。受験資格が2級愛玩動物飼養管理士なのは、何をおいても、ペットとの関わり方を十分に理解した上で、ハード面の整備に携わる人材を育成するためなのです。

中村部長 実践を約束する「ペットフレンドリーホーム宣言」によって会社全体で取り組む意味は、非常に大きいです。貴協会が認める仕組みとして、研究や事業に一層の重みが増します。

東海林会長 住宅業界全体の水準を高めるために、ぜひ、標準ベースを示してほしいと考えています。旭化成ホームズさんは、その先の次の段階に踏み出すことで、業界内での優位性を維持されると思っています。

中村部長 当社内の水準も一層、進化させていきます。本当の意味でのペット共生住宅の在り方を、商品の形で世の中に普及させる責任が当社にはあると思います。貴協会の知見に学びながら、広く伝えていく。今まで以上にペット共生の意義を広めていきたいと思います。

東海林会長 賃貸アパートをペット共生住宅にすると、郊外のバス便といった不利な立地条件をカバーできるそうです。そこは自然が豊かだからこそ、ペットを飼う環境として望む飼い主は多いのです。郊外の空き家や空室が問題になっていますが、それらの活用は新たなマーケットを生むのではないでしょうか。

社会的課題を解決

中村部長 少子高齢化の中で、ペットの役割は、今まで以上に大きくなっています。共働きや高齢単身者の世帯が増えて、家族や社会、自然の一員であるペットは、社会的課題を解決する一つの要素になると思っています。

東海林会長 近隣の騒音や駐車場の問題は、知らない人同士で普段のつながりがないために、大きなトラブルに発展しがちです。そこにペットが入ると、トラブルが起こりにくい仲間意識が醸成されていくのです。

中村部長 ペットは、交流の接点として、大きな意味合いがあります。ペットやペットを飼う人、飼わない人のすべての豊かな暮らしを実現する、という東海林会長の考えるペット共生の姿をビジネスに乗せて、世の中に普及させる活動そのものが必要な時代になっています。

東海林会長 現在の住宅業界は設備や建物だけでなく、暮らし方も提言・販売していると思います。公園の散歩時などにペットを介して、会話のきっかけを生む。そうした交流が、まちを明るくしていきます。ペットと人、住民同士の交流が育まれ、地域コミュニティの形成にも効果があるのです。そのベースがペット共生住宅なのです。

中村部長 住まいづくりのご相談でお子さんの名前をお聞きしても、従来は、ペットの名前までは考えが及んでいませんでした。その面では、ニーズをつかみきれていなかったのかもしれません。質問の工夫により、ペットを軸とする住まいづくりについて顧客に気付きを与え、潜在ニーズを引き出せる可能性があり、そこから新商品の着想を得られる期待があります。

根強いニーズ

東海林会長 ペットは、お孫さんに対するのと同じように、財布のヒモがゆるみやすくなるようです。ペットと人がより住みやすい環境になるならば、お金をかけることをいとわないのでしょう。住宅業界全体から見れば、ニッチな市場ととられがちですが、付加価値のある住まいとして、ニーズは根強いと思います。

中村部長 付加価値のある住まいづくりは、当社の得意領域です。二世帯住宅の一般化をはじめ、共働きやシニア世帯、もちろんペット共生の住まいも提案してきました。これらのコラボによっても、新たな展開を期待できます。

東海林会長 ペット可やペット共生住宅の普及には、オーナーの理解も必要になります。汚される、鳴き声が近隣トラブルになるなどと危惧されていますが、多くは誤解なのです。通常の飼い主は、ペットのために、普通以上に住まいを清潔に保ちます。誤飲防止のためであり、飼い主によっては、熱中症にまで配慮しています。

中村部長 当社では入居時にペットと飼い主を審査していますが、確かに、ペットを飼う人たちの間には、意識にギャップがあります。しかし、意識の高い人たちが集まれば、それほど大きなトラブルには発展しないのです。

幸せな暮らしを

東海林会長 ペット共生が注目されると、住まいの選択肢が増えます。幸せな暮らしが生まれ、良好なコミュニティが形成されます。これからは、ペット共生のスタイルが自然に受け入れられていくと期待しています。

中村部長 築5年以内のペット相談物件の流通量は、全体の4%に過ぎません。更に、そのほとんどがペット可物件であり、良質なペット共生住宅は、わずかしかありません。優良な物件を積み上げることで、理解を促す事例として示していく必要があります。

東海林会長 ペット共生住宅は、住宅産業を本質的に見つめ直す良い機会になるでしょう。単純な「家」でなく〝幸せな暮らし〟を提言・販売する意識に変わる。そのために、「ペットフレンドリーホーム宣言」の仕組みを設けたのです。

中村部長 ペット共生住宅に集う人たちは、本当にペットに深く愛情を注ぐ人たちばかりです。ペットにやさしい住まいは、当然、人にもやさしいのです。ものすごく良い住環境になるのではないでしょうか。皆さんに喜ばれる、幸せにするペット共生住宅の商品を世の中に一層普及させていきます。

東海林会長 住まいは、単に雨風をしのぐ装置ではないはずです。皆さんにたくさんの幸せを生みます。それを実現する企業姿勢は、旭化成ホームズさんの商品提案に既に現れていると思います。ペットと共生することで、ほのぼのと暖かみのある風景をつくれる。そこには、人のつながり、良好なコミュニティがあります。住宅業界の皆さんには、ペット共生住宅を手掛けるならば、まず、「ペットフレンドリーホーム宣言」をしてみよう、との気持ちになっていただきたいのです。

お問い合わせ
(公社)日本愛玩動物協会
TEL 03-3355-7855(祝祭日を除く平日9時30分~17時30分)
​FAX 03-3355-7800
https://www.jpc.or.jp/

「ペットフレンドリーホーム宣言」のお申し込み書は下記よりダウンロードして日本愛玩動物協会までFAXをお送りください。


​「ペットフレンドリーホーム宣言」利用申込書(PDF)

公益社団法人 日本愛玩動物協会

愛玩動物飼養管理士の育成などを通し、動物愛護と適正な飼養管理の普及啓発に努める。79年設立。19年に40周年を迎える。愛玩動物飼養管理士(年間約1万人が受講受験)は、動物関係の法令や保健衛生、疾病予防、犬猫のしつけなどを学び、ペットショップや動物病院の従事者などが資格を取得しており、近年は、住宅業界でも受験者が増えている。