コロナを機に住宅営業にオンラインを活用する傾向が強まっている。不動産会社によると顧客も非対面営業を否定するのではなく、むしろオンラインで住まい探しをもっとスピーディにしたいというニーズがうかがえるという。特に何かと忙しい共働き世帯ではそうした心理が働くものと思われる。また、今や賃貸市場での物件探しはネット検索が主流となっているが、持ち家市場でもその傾向が出始めていると見ることもできる。
オンライン営業は今のところは営業マンのツールの一つだが、将来的には営業活動そのものをコンピューターやAIロボットが行うようになるのではないか。そんな時代を予感させるのが最近、毎週のように不動産業界紙に広告が載るハウスマートの「プロポクラウド」だ。これは顧客情報を登録するだけで、売主には買い希望情報を、買主には希望にマッチした最新物件情報を自動で提案し続ける「自動追客システム」である。同社の宣伝コピーにはこうある。「追客専任の営業担当を月々5万円から」。つまり、生身の営業マンを1人雇えば月30万円以上の人件費が掛かるが機械なら5万円で済むというわけだ。
「自動追客システム」は不動産(セールス)テックの一つにすぎない。今後は現在営業マンが手作業でやっていることの大半をその何百倍・何千倍という速さで処理する技術が登場するだろう。それどころか、人間にしかできないと思われていた顧客の心の内に分け入って真のニーズを探り当てるような作業もAI(人工知能)がこなすようになる。そうなると、不動産会社やハウスメーカーが多くの営業マンを抱える姿はいずれ消滅するだろう。
今でも物件説明や、ローンの手続きなどに関することは〝チャットボット〟で受け答えが可能だし、将来的には個々の顧客が持つ多彩なニーズを分析し、それに合わせて商品をカスタマイズ化していく作業もAIロボットの得意技となっていくだろう。そうなれば、住宅販売会社の各支店にはそうしたテックを使いこなす優秀な人材が一人いるだけで、何十人、何百人という顧客とのコミュニケーションを同時に進めていくことができるようになっていく。
このような技術が普及し導入コストが下がれば、住宅販売会社の販売コストも下がる。その結果、国民は今よりも安い価格で住宅を購入することができるから、機械に追客され、AIに心理分析までされてしまう社会を忌避することはないだろう。
現に今、パソコンをたたけば過去の検索歴から関連した広告が勝手に送られてくることに対し違和感は感じつつも、なんとなく当たり前(ニューノーマル)のこととして受け入れてしまっているところがある。コロナがもたらす〝社会変革〟は、人間とロボットとの関係が新たなステージに入る時機と重なっている。