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酒場遺産 ▶42 上野アメ横 「魚草」 アメ横の料亭

 アメ横の山手線高架下、中華屋台などに挟まれた3坪ほどの「魚草」は、赤いテント地の庇が目立つ吹きさらしの立呑屋だ。開業11年目。正面には「必食・生とレアで蒸し上げる究極の蟹」の文字が掲げられ、その脇には水産と酒類の取引先の社名の短冊が並ぶ。筆者が人でごった返すアメ横に立ち寄った夕刻、常連客らしい若いカップルがテーブルをつめて、猫の額ほどのスペースを分けてくれた。感謝。数あるアメ横の立呑みで「魚草」は魚料理のクオリティーが高い。この店でしか食べられないレアなものも多い。誠鏡を飲みつつ、マズラハギの身と肝を和えた「肝なめろう」と、ニシンの刺身と麹を和えた「生にしん切込み」を頼んだがいずれも絶品のレアものだった。スタッフに訊けば、三陸や島根など全国各地の漁師や仲買から仕入れた魚を、水揚げ後に神経シメし細胞を壊さない最新冷凍技術を用いることで鮮度を保っているという。魚屋の店頭という感じだ。

 酒は月山・誠鏡・出羽桜・国権・栄光富士・梅乃宿・町田酒造・天吹・満寿泉・大七・寒菊で、グラス500~600円(ほぼ500円)と手堅い品ぞろえ。瓶麦酒を飲んでいる人も多い。そして「本日の推し」は先の生にしん切込み(500円)と肝なめろう(500円)、そして「究極の旨み」生たらば(2000円)は軽く蒸しレア状態で出すという。レアものは、モウカザメのハツ刺しのモウカの星(500円)やエイの肝刺し(500円)が人気という。定番の刺身5点盛り(1000円)はその日に入った魚を盛るのだが、この日の5点はインド鮪、ヒラメ、黒鯛、石鯛、ニシン。大ぶりの生牡蛎は1枚400円・3枚1000円、鯨かまとろ800円、穴子刺身800円、鯖500円など。魚のクオリティーは料亭クラス、しかもレアものそろい。1000円札を2~3枚持って、日の高いうちからアメ横の料亭へ向かおう。 (似内志朗)