総合

社説 賃貸住宅の貯水槽管理 災害に備え貯水槽点検を徹底

 国内の住宅・建築物には約100万基の貯水槽水道が設置されている。水道事業の整備が進む近年は、貯水槽を使わない直結型も増えてきているが、それでもストックに設置されている貯水槽の数は膨大であり、この適切な管理と貯水槽検査は非常に重要だ。

 貯水槽は水道法により、受水槽の有効容量10立方メートル超が定期受検が義務付けられる簡易専用水道、それ未満が受検義務のない小規模貯水槽水道に分けられる。これらの受検率は、簡易専用水道で約8割弱、義務化のない小規模貯水槽水道は3%にとどまり、それぞれ定期的な点検と共に受検率向上が大きな課題となっている。

 最も重要な生活インフラといってもよい貯水槽水道が適切に管理されていない可能性がある状況は早急に改善していなかければならない。特に集合住宅では、管理組合や管理会社が存在する区分所有マンションに比べると、集団監視の目が届かない民間賃貸住宅は点検や検査が適切に実施されているかは透明性が低い。貯水槽管理の現実として、ポンプや給排水管などの故障や破損が原因となって汚水など汚染水の混入などを引き起こし、食中毒等の健康被害も報告されている。最悪の場合、事故、トラブルが発生して初めて明るみになる事後対応になってしまうことが危惧されるところだ。

 近年、区分所有マンションに遅れをとったものの、賃貸住宅管理市場においても賃貸住宅管理業法施行を始めとして市場整備が進んでいる。業界団体も契約や金銭管理といったソフト管理重視から、ハード管理にもこれまで以上に目配りするように風向きが変わりつつある。昨年スタートした賃貸住宅メンテナンス主任者認定資格もそうしたハード管理を重視する姿勢の表われだ。

 貯水槽の新たな役割として、日常的に水道水を届けるだけでなく、災害などの緊急時における水の確保という防災機能を備えている点も見直されている。全国給水衛生検査協会では、全国建築物飲料水管理協会、厚生労働省や地方自治体、マンション管理業協会、ベターリビングなどとの共催、後援を受けて、貯水槽の適切な管理、受検率の向上に向けたシンポジウムを定期開催している。また貯水槽を「管理優良施設=S」「適正管理施設=A」に認定格付けする「ランキング表示制度」の普及拡大にも取り組んでおり、貯水槽のあるマンションやビルの資産価値を高める一つの指標に位置付けている。特に「管理優良施設」については横浜市が「災害時給水協力貯水槽」として認定し、災害時の応急給水源としての役割も担っており、全国への波及も期待される。

 賃貸住宅管理団体も貯水槽管理の関係機関と連携し、同制度活用なども視野に入れて賃貸住宅における貯水槽の適切な管理に努めることで、入居者に安全・安心を提供していってもらいたい。