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酒場遺産 ▶21 佐竹商店街 「まこつ」・「真澄」 秋田藩由来の商店街に新旧の人気店

 東京の下町、台東区の新御徒町駅近く、春日通りから清洲橋通りの間に「日本で二番目に古い商店街」と言われる全長330メートルの佐竹商店街アーケードがある。かつて秋田藩の上屋敷が廃藩置県を経て陸軍省用地となったが、1884年民間払下げ後は、店々が立ち並ぶ盛り場となり、芸能施設・遊技場・温泉場などが造られ、大仏も建っていたという。大正初期には商店街は3800戸・人口1万2000人超に膨れ上がり「下町佐竹」の名は広く知れ渡った。今の鄙びた様子からは想像できないにぎわいだったのだろう。関東大震災・太平洋戦争・台風禍による壊滅的な被害を乗り越え、現在の姿となる。「佐竹」の名は、秋田藩の藩主佐竹氏が由来という。

 春日通り近く「まこつ」は宝石職人だった店主が8年前に始めた店で、地元客いっぱいの店内はうるさいほどに活気に満ちている。酒は会津の名酒栄川。純米二合徳利で600円、大吟醸一合600円。升で受けたグラスに波々と注いでくれるのが嬉しい。鮪刺し500円、うるめ鰯400円、砂肝唐揚げ470円、厚揚烏賊塩辛500円などと手頃で美味い。そして商店街から20メートルほど入った「真澄」は創業68年、一番人気の居酒屋だ。間口は狭いが、鰻の寝床のように奥に伸びる。店名は先代の娘の名から採ったそうだが、これを縁として酒も諏訪の名酒「真澄」に絞ったという。一合500円、二合700円、四合瓶で2500円とお手頃だ。食事も蛸刺し、鰯刺し、鰺刺し、ぬたなど400~600円程度と安い。笑顔を絶やさぬ店主夫婦の暖かさが伝わる店だ。数年前にビルに建て替わったが、古い写真から伝わる、かつての燻し銀の店のオーラはいまだ残っている。(似内志朗)