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酒場遺産 ▶20 東京・新橋駅前第一ビル 「信州おさけ村」 マニアックな博物館的酒場

 前回に続き、新橋駅前第1ビル「庫裏」と同じ1階の「信州おさけ村」を紹介したい。店内は立ち席のみで15人も入れば一杯になるが、ビルの通路にはみ出し飲んでいる光景は一見の価値がある。そして、酒好きには堪らない長野県産の日本酒の品揃えと見事な肴の種類(これらも長野県産)、そして原価に近い価格設定が嬉しい。日本酒以外にも地ワイン、地ビール、地元産焼酎(やーこん、蕎麦などレアものも)が置かれる。商売を度外視しているようなこの店は、長野県酒類販売株式会社が運営する「地酒ミュージアム」なのだ。壁には一面酒ラベルと無数のメニューか貼られる。小さいながらも地酒直売も行い、奥に酒の貯蔵庫もある。

 酒は180ミリリットルで350~1100円まで。種類が多いので書ききれないが、地域別の「三種の利き酒セット」(550円・750円)が楽しい。「北安曇・大町セット(北アルプス純米酒・北安大国 夏酒・大雪渓夏の純米酒)」「松本セット(大信州純米大吟醸極・高波純米吟醸・美寿々大吟醸)」「諏訪セット(翠露 純米大吟醸美山錦・御湖鶴純米吟醸山恵錦・真澄純米吟醸)」など。小皿120円からの肴も魅力的で、青唐辛子味噌、梅しいたけ、柿茸の佃煮、くるみ味噌、行者にんにく、山椒しめじ、しょうゆ豆、生姜佃煮、野沢菜油いため、葉わさびの風味漬け、葉唐辛子、信州サーモン、シャモささみ燻製、野沢菜わさび風味、おたぐり(馬の腸を味噌で煮込んだモツ煮)、豆腐の燻製、馬の燻製、鹿肉大和煮など、いずれも長野県郷土料理だ。情緒を楽しむ酒場というよりマニアックな博物館的酒場。酒好きには放っておけない場所だ。午後から営業、日祝休み。(似内志朗)