売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(35) ~畑中学 取引実践ポイント~ 気持ちに余裕持ち確実に「残金決済・所有権移転登記・引き渡し(1)」

 いよいよ取引の最後、残金決済・所有権移転登記・引き渡し(以下、残金決済等)となる。ここでのポイントは、「登記手続き」「買主の残金等の振り込み」「売主の着金確認」この3つだ。

 初めてのうちは手続きが煩雑にあるので、何をしたら良いか迷ってしまうことも多いが、このポイントを1つ1つこなして進めていけば大過はないだろう。気持ちに余裕をもってゆっくり確実に進めていこう。手続きの流れは一般的に次のように進んでいく。(1)残金決済場所への集合、(2)必要書類の確認、(3)登記手続き(所有権移転他)、(4)振込伝票等の記入、(5)買主の振込手続き、(6)売主の着金確認、(7)領収書等の交付、(8)諸経費の清算(仲介手数料の支払い)、(9)鍵など物件の引き渡し、(10)物件資料の授受となり、解散となる。

 (1)残金決済場所は原則買主が融資を受ける金融機関になる。取引の最後は印象に残るので、慣れない遠方の場所でも遅刻しないように早めに着いておく。スムーズで良い取引だったと印象付けておくことで、取引後に何かあっても穏便に済ませられることも多い。売主と買主が来たら早々に(2)必要書類の確認も行う。万が一持参し忘れた物があるなら速やかにどうするか対策を取る。(3)登記手続きは司法書士の案内にしたがって、売主と買主に登記原因証明情報や委任状に署名捺印をいただいていく。ここでは私たちが関与するところはあまりない。

 一転、(4)振込伝票等の記入では私たちも注意が必要だ。売主の口座番号、振り込みする金額を買主に確認しつつ記入してもらい、その後は私たちも間違いがないか確認する。売主にも確認してもらうのも手だ。なお自分の口座からお金を出して振込を行うので、振込伝票と払戻伝票はセットとなる。一緒に書いてもらう。その他仲介手数料や登記費用なども現金持参でないなら、払戻伝票等を記入してもらう。一部金融機関はアプリなどで振込等ができるが、そうでないなら伝票の記入方法は知っておこう。

 伝票が書き終われば窓口などで(5)買主に振込手続きをしてもらう。伝票と一緒に買主の運転免許証等の身分証明書と振込手数料を出す。振込手続きが終わり、手続き済の押印がされた伝票が出てくれば(6)売主に着金確認をしてもらう。アプリで確認か、なければ通帳記帳となる。近くの該当する金融機関のATMか支店へ向かってもらおう。

 なお、(5)(6)の売主の口座等に着金するまで時間がかかることが多い。その間は取引完了確認書など取引書類に記入してもらったり、売主や買主と雑談をして過ごすことなる。時間が余り無言の状態が続くと気まずいので、話題の1つ2つ提供できると良いだろう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。