総合 売買仲介

~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(33) トラブル回避へ後日確認は必須 「残金決済日の調整と抵当権抹消手続き」

 買主の住宅ローンの本審査も無事承諾で終わったら、いよいよ残金決済・所有権移転登記・引き渡しの日程(以降、残金決済日)を売主と買主で調整して決めていく。おおむね3週間以降先の日程で平日の午前中で調整する。

 3週間以降先となる理由は、(1)買主の金銭消費貸借契約(融資を受ける契約)の手続き、(2)売主の抵当権抹消手続き、(3)売主と買主の引っ越し、(4)残置物の確認があるためで、他にも残金決済に必要な書類を準備するためだ。一定の期間が必要なので余裕を持って決めていく。

 また、平日となるのは所有権移転の登記申請が平日受付となるからだ。登記申請の受付時間は平日8時30分から17時15分まで。午後でも大丈夫となりそうだが、売買代金の振込手続きや着金確認、司法書士の登記申請手続きの準備時間を考えると、金融機関が開く午前9時以降の午前中になることが多い。

 なお、現金での売買で金融機関を通さず手渡しなら午後2時ぐらいまでなら問題ないだろう。残金決済の所要時間は多めに3時間ほど見ていただき、忙しい日は避けてもらうのが賢明だ。手続き自体は早ければ30分ほどで終わるが、振り込みと着金に掛かる時間が金融機関によるのでまったく読めない。ネットでの振り込みなら着金まで30分程度とそこまで掛からないが、伝票等で金融機関の窓口を通したり、振込案件が多い月末だと混雑で処理に時間が掛かるためだ。筆者は3時間ほど掛かったことがある。「そろそろ出ないといけない」売主や買主が慌て出さないように時間の余裕が持てる日を設定していこう。

 残金決済の場所は買主が融資を受けるならその金融機関、もしくは振り込みを行う売買代金が入っている口座の金融機関、近くの事務所等の場所で行う。ただ、そう決まっているわけではないので、他にも取引上スムーズに運べる場所があるならそこで調整しよう。

 この残金決済日が決まれば、売主には(2)抵当権抹消手続きを取っていただくように案内する。案内は簡単で売主に「『売買で抵当権抹消(残高の一括返済)をしたい』と融資を受けている金融機関に電話してもらい、店舗か郵送でその手続きをしてください」で十分だ。「どこに電話していいか分からない」そう言われたら繰り上げ返済の案内やローンの償還票を見てください、もしくはローンの引き落しがかかっている金融機関の口座支店で確認してください、これでよい。

 案内してから後日、手続きをしたかどうかを売主、もしく抵当権を付けている金融機関に確認して終わりとなる。手続きが済んでいないと抵当権が抹消できず=残金決済ができない。トラブルになる。「後日の手続き確認は必須」と考えよう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。