売買仲介

~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(31) 想定外の費用負担を回避へ 「室内外の残置物確認」

 「ないはずのエアコンが残されているので撤去してください」

 筆者の実例。残金決済後に鍵を受けとって購入したマンションへ向かった買主からの連絡。すぐ買主の元に向かい確認すると北側居室に取り外していないエアコンがある。設備表を見るとエアコンは「無」。売主で撤去となっている。慌ててその場で売主側不動産会社の担当者へ連絡をして撤去してもらう手配を整えたが、「大丈夫と聞いたから引き渡しを受けたのに」と買主からの不信感と、無事撤去までサポートするという緊張感でノーダメージとは言い難かった。残金決済前に室内外の残置物確認をしておかなかった責任だ。中には「引っ越し時に撤去したら3000円で済むのに、個別依頼だと1万円と負担増になるのが気にいらない。引っ越し時にエアコンの撤去を言わなかった仲介責任はないのか」と負担を請求する売主もいる(ただし一理はある)。どちらにしても余計な作業と時間が取られ、買主の心象も悪くなる。デメリットばかりなので、そうならないように売主の退去後、残金決済前に買主と一緒に室内外の残置物確認をしておこう。

 ポイントは3点。余計な残置物があることが前提で、(1)売主に想定外の費用負担をかけないこと、(2)売主に撤去等をしてもらう環境であること、(3)買主と一緒に確認し、誤認を避け納得を得ること、この3点から退去後すぐに室内外の残置物確認していく。

 (1)は当然だ。退去時に一緒に撤去せず、後日個別に依頼すると費用が高くなることが多い。金銭感覚は売主によるので、わずか数千円の違いでも「高い」と撤去依頼に躊躇(ちゅうちょ)する売主はいる。そのため、退去が終わりそうな時間帯に訪問し、撤去が必要なものがあればそれを伝えるのが最善だ。急に言い出すと迷惑がられるので売買契約時にでも「引っ越しの最後に残置物確認させてください」と言っておけば問題ない。

 (2)は残金決済後は売主の対応も遅くなりがちだ。そのため残置物があるなら残金決済前に言わなくてはならない。

「撤去されないと残金決済ができません」と伝えるようにしよう。

 (3)はほぼ必須だ。「忙しくて見にいけないので、代わりに確認をお願いします」と言われても容易に受けず、「トラブルの原因にもなりますので、1~2時間お時間が空く日をください」と伝えて、買主と一緒に残置物確認するようにしよう。それでもダメなら写真を撮影して買主に確認でもよい。買主の確認と納得が必要な場面であるので、確認責任は買主に持ってもらう。残置物トラブルはなくて当たり前で普通だが、気を抜くと遭遇してしまう。避ける手立ては講じていこう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。