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酒場遺産 ▶12 東京・赤羽 「いこい」本店  約半世紀続く骨太な立呑み

 最近の赤羽は「酒場の聖地」と言われるほど、平日早い時間から昼呑み愛好家でにぎわう。東口北寄りのOK横丁・一番街辺りは特ににぎやかで、酒飲みの間では有名な「まるます家」「丸健水産」や、無数の「せんべろ(1000円でベロベロに酔える店)」が立ち並ぶ。古い酒場、新しい酒場。エネルギーに満ちあふれている。「本当に住みやすい街大賞」2019年第1位らしい(本当か)。また1878年創業の酒蔵「小山酒造」も赤羽にある。若い客が多いのも特徴だ。

 筆者は駅東口から近い立呑み「いこい」本店には足が向いてしまう。約半世紀続く骨太な本物の立呑み酒場だ。厚手のビニールカーテンが内部の蛍光灯の光を乱反射し、夜は一種独特のオーラを醸し出す。店に入ると正面に大きなコの字カウンターが構える。勘定はCOD(Cash on Delivery)、分厚い木のカウンターに1000円札を1枚置くと、注文した分だけ店が取っていき、コインが無くなれば1000円札を補充する。酒も肴も全てが安くて美味い。

 三辺を囲むカウンターに約20人の客が立つ。男のひとり客が多いが、常連らしき女性がひとり豪快に飲む姿もいい。壁一面に貼られた無数の酒と食のメニュー。酒は宝寿特別純米・久保田特別本醸造・副将軍純米吟醸・菊水純米がいずれも380円、ビール赤星大490円・酎ハイ230円など全て安い。皿は全て一人用のサイズだ。もつ焼きはかしら・軟骨白・レバ・ハツなど2本240円、鰯刺し・煮凝り・ガツ刺し・蛍烏賊・あん肝・鶏皮ポン酢・しめ鯖・ぬたなどが200円前後、ポテサラ・厚焼き玉子・里芋煮つけなどの小皿はもっと安い。なるほど住んでみたい街だ。(似内志朗)