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トップインタビュー 小田急不動産・五十嵐秀新社長 投資用、買取再販も事業の柱に

 4月、小田急不動産の新社長となった五十嵐秀氏。3カ月余りを経て、改めて就任を受けての所感や事業方針、今後のビジョンなどについて話を聞いた。 (聞き手・佐藤順真)

「〝街のファン〟拡大に取り組む」

 ――抱負、所感などは。

 「就任から約3カ月が過ぎたものの、元々は(小田急)電鉄出身ということもあり、いろいろと教わりながら不動産について学ぶ日々だ。その中で改めて感じるのは、小田急グループは運輸、商業、そして不動産を事業の大きな軸としているが、中でも不動産はまだまだ伸ばしていける分野だということ。軸となる事業はいずれも人口動態などの影響を強く受ける分野であり、〝いかに人に動いてもらうか〟が重要ではあるものの、やはり〝生活する場〟のことも非常に大事なのだと実感している」

 ――具体的な事業方針は。

 「先に挙げた3分野は引き続きグループの柱としていくが、当社として今後は投資用不動産と買取再販の2事業にも一層力を入れていく。近年かなりの規模に育ってきていることもあり、新たに加える事業の柱として、当社全体の成長を促進していければ」

 「エリアとしては当然、引き続き小田急線沿線を中心に事業を展開していく方針ではあるものの、ブランドの認知を広げながら、ある程度沿線の周辺へも事業範囲を広げていきたい。具体的に注目するエリアとしては、まず神奈川県の海老名市が浮かぶ。鉄道・自動車道の要衝であり近年開発が著しく、当社も現在JVで事業を展開しているほか、電鉄や商業の分野でも特徴的な地域だ。また7月下旬に戸建て分譲街区『世田谷ネクストプライムプロジェクト』(3街区、全29戸)を発売予定の東京都世田谷区も重要。既に同物件への反響には手応えを感じており、今後も更にこのエリアで開発を進めていきたい」

 ――今後のビジョンについては。

 「不動産事業を通じて、(沿線の)〝街のファン〟を増やしていきたい。住民になってもらうのがベストだが、交流人口、関係人口のような形でもファンが他の地域から訪れる、魅力ある街づくりを目指す。そのためにも、過去に開発した街でのリフォーム事業など、生活者に貢献する事業という視点を重視する。それが電鉄系不動産企業の価値あるいは存在意義ではないか。また4月には、omusubi不動産(千葉県松戸市)と空き家再生に向けた協定を締結した。新たな柱の一つとしていく買取再販事業にもつながる話だが、今後はストックビジネスでも存在感を示していきたい」

 「併せて、ハード面だけでなくコミュニティの形成・活性化にも貢献していく。6月には、当社の運営するコミュニティ施設『CAFE & SPACE L.D.K.』(神奈川県川崎市)で、多摩大学との連携による『マチカドこども大学』をプレ開校したが、こうした取り組みを広げていきたい」

 「そのほか環境対応の面では、ZEHやZEBなどはもちろん、自然環境との共生などにより、生活者の精神的なニーズに応えて心の潤いにつながるような物件づくりを図る。更に、現在模索中の部分はあるものの、DXへの取り組みも欠かせない。様々な面で時代の転換期にあると感じているが、新たな取り組みに挑戦することで見えてくるものはある。積極的にトライしてノウハウを蓄積し、将来の糧にしていきたい」