賃貸・管理

全宅管理 「成人年齢18歳 賃貸現場の影響」(上)〝借家契約 イロハを寄贈〟「1人暮らしガイドブック」全国の学校から反響

 成人年齢が民法の改正により今年4月1日付で20歳から18歳に引き下げられた。これにより様々な契約が保護者の同意を得なくても可能になった。クレジットカードやローン、携帯電話なども保護者の同意はいらない。学生が住む部屋を借りるときも保護者の同意なく契約できる。住宅・不動産業界では、大きなトラブルは増えないとみるが、相応の対応の仕方も必要ではないかと身構える。全国賃貸不動産管理業協会(全宅管理)では、公益事業の一環として若年層に対して賃貸住宅の啓発を行ってきたが、成人年齢の引き下げに伴い、より一層の啓発に取り組んでいる。

 同協会では、改正民法の施行前の昨年11月から賃貸借をテーマに若者向けにアニメーションを利用したウェブサイト「大人へのトビラ」を公開したり、建物賃貸借の啓発冊子「1人暮らしガイドブック」に成人年齢引き下げについての解説を加えた改訂版を発刊して教育機関への寄贈を行ってきた。
今年2月中旬に全国の大学・高校・児童養護施設など計6656校に寄贈についての「お知らせ」を配布したところ、予想を上回る反響を受けて5月末までに429校から申し込みがあり延べ7万8584冊を寄贈したという。

 同協会専務理事の岡田日出則氏は、「18歳で親御さんの同意がなく契約ができるようになったことに特段の驚きはない。民法改正前から運転免許は取得できるし、結婚も男性18歳、女性16歳(改正民法で18歳に引き上げ)だった。ただ、賃貸現場が注意すべき点として、保護者の同意がなくても本人が賃貸借契約を結ぶことについては、よりきめの細かい案内と説明が必要になる。情報があふれる中で誤った情報を受けて誤認する可能性が多い。我々の役割は、正確な情報を分かりやすく伝えて本人に納得して契約、入居してもらうことだ」と話す。同じ10代でも中学や高校を卒業してから就職している人と、大学や専門学校といった学生とでは契約時の対応も変わらざるを得ないとの認識もにじませる。

 基本は家賃の負担能力が判断基準だ。契約する人の収入というバックグラウンドが審査で重要だが、学生にそれを求めることは難しい。保護者との契約や親を連帯保証に付ける、家賃保証会社を利用する対応が現実路線だ。成人年齢引き下げを受けてのガイドラインを特段策定する予定はないが、協会の会員には、トラブル回避という意味から「敷金」「共益費」「更新料」などがどのような性質の費用なのか、契約時の家財保険の必要性と保険に入らないで賃貸借契約した場合に起こり得るリスクを明確に伝える必要性があると強調する。
次号で岡田専務理事のインタビュー記事を詳報する。