総合

地価上昇の札幌・福岡に投資マネー流入 国際競争力ある都市へ 再開発と高級ホテル誘致など

 地価公示(1月1日時点)は北海道と福岡県への投資マネー流入が鮮明となった。変動率を見ると、住宅地の上昇率トップ10はすべて北海道内の地点となり、商業施設も1位と2位、4位にランクインし、残り7地点を福岡市内が占めた。その背景にあるのが再開発による街の発展と訪日客に頼り過ぎない街づくりが相乗効果を出している。コロナ禍で需要を引き付けている強みを追う。

福岡外需に頼り過ぎず

 博多駅周辺・天神地区が福岡市の地価上昇をけん引する。商業地を見ると、福岡県は7年連続、福岡市は10年連続で上昇した。全国上昇率トップ3の「博多祇園プラザビル」(18.0%)は1m2当たり210万円だった。両地区に近接する利便性が良好なエリアで割安感のある地域が継続的に上昇し、オフィスとマンションの需要も堅調に推移している。福岡市内の商業地は9.4%上昇し、前年から2.8ポイントアップした。

 とりわけ23年に延伸開通する地下鉄の新駅「櫛田神社駅前」周辺は天神・博多エリアの近接性に伴い利便性の向上が見込まれ、オフィス需要は旺盛だ。国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」によれば、福岡市の生産年齢人口は25年まで10年間で2.0%増加する見通しだ。就業者数も12年から増加傾向にあり、福岡市内に通勤しやすい割安感のある周辺エリアの需要が増えている。福岡県の住宅地は8年連続で上昇している。

 地価上昇を演出する都市インフラの整備は、観光地としての魅力を高めるにとどまらず、外国人観光客に頼り過ぎない福岡市が主導する街づくりが投資家から関心を集めている。天神ビッグバンと博多コネクティッドの再開発プロジェクトが地域経済を押し上げる。昨年10月には天神ビッグバン第1号の「天神ビジネスセンター」が竣工した。延べ床面積は6万m2超の大規模開発だったが満室に近い稼働でスタートを切った。

 旧大名小学校跡地に積水ハウスや西日本鉄道などが開発を手掛けている地上25階建ての複合施設が22年に竣工を迎える。中核施設となるオフィス棟の募集賃料は天神ビジネスセンターとほぼ同額水準が見込まれており、「1坪当たり月額で3万円台(共益費込み)と言われている」(JLL)。外資系ホテルのザ・リッツ・カールトンも誘致して九州で初めての高級ホテルと注目を浴びている。

 博多コネクティッドの推進では、JR九州が3月16日に「博多駅空中都市プロジェクト」が始動すると発表した。同駅の線路上空に新たな都市を創出するもので、国際ビジネス都市・観光都市に向けて最先端の複合ビルを28年末までに竣工させる予定だ。在来線竹下側の敷地約5200m2を開発し、同駅周辺で最大規模の基準階面積1000坪や全室35m2以上の高級ホテル、にぎわい創出の商業施設や広場整備などで博多口と筑紫口の回遊性を高める。

 一方の北海道を見ると、全用途平均は3.9%上昇し、6年連続での上昇となった。その中で、特に札幌市へのアクセスが良好な北広島市が注目を集めている。全国の変動率で住宅地トップ10を道内地点が独占し、商業地でも1位と2位にランクインした。

札幌起点に需要広がり

 商業地のトップは、「北海道銀行北広島支店」(19.6%上昇)だった。北広島駅西口再開発事業やプロ野球・日本ハムの新球場となるボールパーク事業などは、訪日客需要を失い下落が続く繁華街の札幌・すすきのエリアとは違った風景を見せている。

 すすきのだけでなく、21年まで4年続けて上昇率全国1位だった倶知安町の姿もトップ10から消えた。札幌駅南口のビジネス街に加えて、駅片側や北海道新幹線のホームが設置される駅東側エリアなどの再開発進展を映し出す。

 札幌駅に隣接する再開発ではマリオット・インターナショナルとのパートナーシップで約200室の国際水準クラスのホテル計画の内容も検討。東京や大阪に負けない国際都市へとアクセルを踏み込んでいる。