2021年度(令和3年度)の宅地建物取引士資格試験(宅建試験、試験実施機関・不動産適正取引推進機構)が10月17日、全国47都道府県の試験会場で実施され、前年度と同様に新型コロナウイルス感染を受けての対応を迫られた。異例の受験体制が2年連続で続いた中での受験の申込者数は同機構の8月27日公表ベースで24万1502人となっている。合格者は12月1日に不動産適正取引推進機構が発表する。宅建試験の合否ポイントについて本紙講師陣から探った。21年度の宅建試験も感染症対策として試験会場で密を避けるため12月19日に追加試験を特別実施する予定。
法令上の制限が難関
前年に続くコロナ禍での宅建士試験の実施となった。
新型コロナウイルス第6波の懸念が消えないものの、足元では緊急事態宣言が解除されたあとも感染者数が低位に推移しており、ワクチン接種が急速に進んできたことで受験者のマインドが1年前と違うことなどが受験者数に反映されている可能性がある。
大都市部を中心に中古住宅市場の需給もひっ迫するなど媒介業務で宅建士に求められる能力も年々上がっている。
コロナ禍で地方創生が叫ばれる中で、遊休施設を収益化する動きが全国的に注目を浴びる。宅建士が果たす役割に期待がかかっている。
09年から16年までの8年間、宅地建物取引士の受験者数は20万人を割り込む水準が続いていたが、17年度から20万人の大台を回復している。人気資格として宅建士の復権がうえかがえる。
コロナ禍で最初の試験となった20年度の受験者数でも10月と12月の追加試験を合わせると20万4250人となった。17年度から20万人の大台が続いている。今年も12月に2回目を実施するため、ここでの受験者数にもよるが感染抑制がこのまま続いていけば5年連続で20万人の大台を維持できるかもしれない。
応用力が問われる問題増加
住宅新報の講師陣に分析してもらったところ、21年度の試験の特徴は、「昨年に比べて難しい。応用力を求められた感じだ。合格ラインは前年より2~3点下がるのではないかと思う」と話す。
特に法令上の制限の都市計画法が最も難関だった。「問18の建築基準法の問題も初めて出たのではないか。問17では防火と耐火の一文字違いの引っ掛け問題があった」ともいい、引っ掛け問題に注意が払えていたかが例年と変わらず問われていた。
権利関係も全体的にやや難しかった。民法改正に関する問題も多く、今年も相続の配偶者居住権に関する問題などは難易度が相当に高くなっている。「(美術品の売買契約を問う)問10も過去に一度も出たことがなく点数を下げるための問題だ」と指摘する。
もっとも、権利関係は従来の基本的な判例や条文を読み込んでいけば理論的な思考から解を導ける問題だったともいう。税法も難しく3点中2点取れれば上出来だとした。
とりわけ全20問ある宅建業法は合否を左右する。
「最低でも16点は死守すべき。宅建業法で点数を稼ぎ、難関だった法令上の制限などを補えたかが重要だ」とした。前年の試験は民法改正に関する問題が多くみられたが、今年もその流れが続いた。条文や判例をよく読みこんでいる人でも手間取る問題が見受けられた。5問免除の土地建物・需給関係はやさしく3点以上は取れるとした。
21年度は総体的に難しさを漂わせたことで本紙講師陣は合格ラインを35点前後と想定する。20年度10月実施の合格ラインは38点だった。講師陣は「丸暗記で解けない問題が増えた。意味が分かっているかを問われている」と話す。
なお、新型コロナウイルス感染対策として実施する12月19日の追加試験は北海道、埼玉県、千葉県、東京都、大阪府、滋賀県、広島県、沖縄県の8都道府県となる。合格者は来年2月9日に発表する予定だ。