政策

21年基準地価・地域別 住宅地改善も商業地は下落率拡大 大阪圏・商業地は9年ぶり下落

 21年都道府県地価調査は、コロナ禍の影響を受けてから2度目の実施となった。新型コロナ感染症の感染拡大や、それに伴う緊急事態宣言の発令など、経済活動再開への道のりは遠く、商業地を中心に先行きの不透明感が現れた。

 全国の「上昇」「横ばい」「下落」の地点数を用途別で見ると、住宅地の下落は55.4%(前年比マイナス7.6ポイント)と前年から大きく減り、上昇は21.9%(同プラス3.1ポイント)、横ばいは22.8%(同プラス4.6ポイント)とそれぞれ増加した。一方、商業地の下落は54.9%(同マイナス0.6ポイント)とほぼ前年並み。横ばいは23.5%(同プラス6.5ポイント)、上昇は21.6%(同マイナス5.9ポイント)となり、コロナ禍の影響で下落地点数が増加した20年調査と比較すると、住宅地の改善が目立った。

 三大都市圏でも特徴の差が如実に現れた。大阪圏では商業地が0.6%下落(同マイナス1.8ポイント)となり、12年以来、9年ぶりに下落に転じた。商業地における地価下落率全国1位(大阪市道頓堀地区、前年比18.5%下落)および同2位(大阪市なんば地区、同16.6%下落)が大阪市となるなど、インバウンドを中心とした観光客数の激減や、人流の抑制が影響を長引かせているようだ。

 一方、20年同調査で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも下落に転じた名古屋圏は、全用途平均が0.5%上昇(前年比プラス1.3ポイント)となり、V字回復の様相を示した。同じく商業地は1.0%上昇(同プラス2.1ポイント)となるなど、都市計画の緩和による再開発工事が進み、繁華性への期待が上昇を後押しした格好だ。住宅地も0.3%上昇(同プラス1ポイント)となり、国交省地価調査課では「製造業が盛んな同地で工場誘致などが進み、雇用環境の安定化に寄与している。20年調査時は先行きの不透明さから下振れしたが、経済や人の動きが出てきた。潜在的に底堅くある住み替え需要が戻ってきたのではないか」と見る。

地方四市は上昇続く

 地方圏では、地方四市(北海道札幌市、宮城県仙台市、広島県広島市、福岡県福岡市)の上昇が際立つ。特に札幌市は、鉄道駅徒歩圏の利便性が高い地域を中心とした需要の堅調さなどを受け、住宅地が7.4%上昇(前年比プラス1.3ポイント)。また、福岡県福岡市の商業地では7.7%上昇(同プラス0.2ポイント)と上昇率が拡大した。同課では地方四市の共通点として、「再開発計画が続き、マンション需要に加え、オフィス需要も見られる。人、仕事、経済などブロック都市の中心性による地価上昇のトレンドはコロナ禍でも底堅く、中期的に続くだろう」と語った。

「二地域」需要に差も

 コロナ禍を契機とした二拠点居住にも濃淡の差が見て取れる。別荘地の長野県軽井沢町は、住宅地の複数拠点が二桁上昇となったことに加え、商業地「軽井沢5―1」も2.4%上昇(前年比プラス2.4ポイント)と上昇率が拡大した。同町は転入超過となるなどコロナ禍で移住先としての需要も高まり、地価の上昇が継続している。別荘地では北海道倶知安町の住宅地「倶知安―2」が17.4%上昇(同マイナス11.8ポイント)と地価上昇を維持。また山梨県富士河口湖町の住宅地が5.2%上昇(同プラス4.1ポイント)となった。一方、近年火山の影響や災害などがあった神奈川県箱根町は0.5%下落(同プラス0.5ポイント)。都心からのアクセスや現地での交通利便性に加え、近年の自然災害などの影響も出ているようだ。

 このほか、用途別では、工業地の全国平均が0.8%上昇(同プラス0.6ポイント)で、4年連続の上昇となった。コロナ禍の巣ごもり消費と連動したeコマース市場の拡大により、高速道路のインターチェンジ周辺等の交通利便性にすぐれ、物流施設建設の適地となる工業地では上昇となった。特に地方四市では7.4%上昇(同プラス2.1ポイント)と、全国平均を引き上げている。

 同調査は、各都道府県知事が毎年7月1日時点における基準値の1m2当たりの価格を調査し公表するもの。都道府県の発表に合わせ、国交省が取りまとめて公表している。今回の基準地点数は2万1430地点。同省が毎年1月1日時点の地価を調査、3月に公表している地価公示と、相互に補完的な関係にある。