政策

国交省「不明土地法」見直しへ審議 「地域福利増進」は低調 制度周知や戦略的活用の要望も

 国土交通省では、19年6月に施行された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地法)」の見直しなどに向けた審議を進める。地方公共団体を対象にしたアンケート結果では、所有者不明土地(不明土地)の存在を把握している自治体のうち、地域福利増進事業について「活用を検討しなかった」という回答が9割を占めるなど、制度普及の課題が浮き彫りになった。

 同省は9月16日、国土審議会土地政策分科会第43回企画部会を開催した。所有者不明土地法施行後3年の見直しや、土地基本法に基づく土地基本方針の変更に関する具体的方向性の提示を目的としたもの。所有者不明土地法の見直しの検討材料とするため、今年2月10日~3月10日に全国の自治体(47都道府県、1747市町村)に実施したアンケート結果が共有された。

 それによると、回収率は都道府県が100%、市町村は72%(1262市町村)となり、関心の高さがうかがえた。一方、不明土地を把握している市町村(n=392)のうち、地域福利増進事業の活用(複数回答)について「そもそも検討しなかった」が90%。検討したのは11%にとどまり、その理由として「適当な事業がない」「使用権10年の費用対効果が低い」など制度的な問題が挙げられた。

 行いたいと思ったことがある地域福利増進事業(n=1262)では、「土地の管理を行う事業」が529件(42%)で最も多く、次いで災害応急対策事業(11%)、再生可能エネルギー発電施設整備事業(4%)と続いた。また、管理不全土地に対する新たな仕組みとして、固定資産課税台帳等を活用して所有者探索ができる仕組みや、指導・助言・勧告・命令等の措置を法律に規定することに対し、いずれも半数以上の地方公共団体が積極的な意向を示した。 委員からは「コロナ対応等に追われ、マンパワーやノウハウが不足している」「戦略的な活用指針が必要」など、今後の見直し検討の際の認識の必要性が指摘された。草間時彦・全国宅地建物取引業協会連合会常務理事は、不明土地対策に関する地域福利増進事業の周知の推進を指摘。更に「低未利用土地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除制度」について、「民有の活用には我々民間も関心を持っており、連携が可能。特例の要件緩和を期待する」と要望した。

 事務局では、地域福利増進事業の低調要因について精査中としながらも、「対象範囲を拡大した一方、地方自治体は様子見で定着していないのは課題。自治体が不明土地の存在に気づくのが公共事業を検討した際などに限られている点もある」と受け止めた。

 今後は10月28日に、地域における再生可能エネルギー発電事業に関する議論を開く。12月末までに不明土地法見直しに向けた部会とりまとめを行う予定だ。