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大手デベの防火防災訓練 VRや動画配信を活用

 9月1日の「防災の日」に合わせ、例年オフィスビルでは防火防災訓練が行われている。コロナ禍も2年目となり、大手ディベロッパーによる防火防災訓練もICT(情報通信技術)を活用。防災センターの訓練や実証実験、テナント向け訓練にVR(仮想現実)やウェブ配信などを使って密を避けると共に、リアルでは難しい環境を再現することで、実際の災害や火災時の迅速な対応を期待する。

遠隔などで災害時の対応を訓練

 森ビルは9月1日、火災時初動訓練VRシミュレーターを公表した。「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」をモデルにVRを作成。これまでは、テナントが入居する実際のオフィスやレジデンスにおける大規模で本格的な訓練の実施には限界があった。しかし、VRを活用することで、それが可能になる。現実世界で実体験することが難しい状況でも、臨場感のある初動訓練が可能となる。VRシミュレーターでは、訓練者が腕に付けたセンサーにより、火災報知器を動作させたり、ドアノブに触れた際に火災による熱を体感することもできる。シミュレーション内での判断や行動に対する採点機能も搭載しており、客観的な採点結果を表示する。

 人流抑制や様々な行動制限がある中でも、時間や場所を選ばず、何度でも、火災時における適切な初動訓練を実施することが可能だ。「新しいプロジェクトにおいて、完成前に訓練をすることができる」(森ビル)とし、効率的なスキル向上を期待できる。森ビルでは、VRシミュレーターを活用し、物件管理に携わる現場の社員や協力会社の社員を対象に、2台のVRシミュレーターによる訓練を実施していく。

通信遮断時の情報提供

 三菱地所は9月1日に実施した総合防災訓練の中で、通信インフラ遮断時において必要な情報を受け取れる仕組みの構築に関する実証実験を行った。

 実証実験では、通信インフラ遮断時における、スマホアプリを介した情報提供の有用性を検証した。実験内容は、三菱地所本社「大手町パークビル」と「丸の内北口ビル」に設置されたビーコンとスマホのBluetoothやGPSが反応し、その人のいる場所ごとに、(1)ビル内の避難経路マップ、(2)広域避難場所案内を表示した。訓練当日に両ビルに出社している社員を対象とした。

 今後、AEDの位置など提供する情報の拡充やテナントを含めた対象者の拡大を検討する。

リモートによる訓練広がる

 森トラストは、9月2日にテレワーク時の災害を想定した「リモート震災訓練」を実施。災害時の少人数対応におけるリアルな状況を想定したルールを整備した。また、リモートでも社員や各ビルと密な連携を取るための「災害時情報共有ツール」の操作習熟や、感染症対策に対応した「震災対応マニュアル」の実効性を確認し、社員一人ひとりの災害対応の熟練度向上を図った。

 住友不動産は、オフィスビルで行われる防火防災訓練をオンライン配信で実施した。8月26日に渋谷消防署と連携し、「住友不動産渋谷ガーデンタワー」(東京都渋谷区)で、テナント向けにリモート防火防災訓練を行った。渋谷消防署が独自に作成した「しぶチャレ!」を使ってレクチャー。また、消火器の使い方など基本的な事項を動画などで説明を行った。在宅勤務で、現地参加が難しい人に対してはウェブ配信を行い、リモート形式での参加となった。参加したのは約50人で、このうちウェブでの参加は約30人。当日、ライブ配信で参加できなかった人を対象に、テナントには住友不動産が作成した動画を渡す予定だ。