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三井デザインテック 新本社「クロスオーバーラボ」稼働 知見、哲学、理想を体現

 三井デザインテックが新本社を7月5日に開設、稼働を開始した。本社としてのオフィス機能に加え、同社のプロダクトのショールームとして、また先進的オフィスの研究を実践する場として位置付け、全体を「クロスオーバーラボ」と命名。デザインにおける同社の哲学や〝ありたい姿〟を体現する空間に仕上げた。7月28日に行われた報道関係者内覧会を基に、新本社の特徴を紹介する。

 三井デザインテックは、20年10月に三井不動産リフォームと会社を統合。今回の新本社開設により改めて両社の拠点も集約し、〝新生三井デザインテック〟として再始動した格好だ。「銀座6丁目-SQUARE」(東京都中央区)の1~3階、計約1500坪のフロアに構えた新本社では、同社独自の「クロスオーバーデザイン」が随所に反映されている。

 「クロスオーバーデザイン」は、クリエイティブ領域において同社の根幹となる思想であり哲学。ジャンルや属性の境界線を越え、異なる発想や要素、個性を掛け合わせ新たな空間価値を創出するという考え方だ。例えばオフィスとホテル、住宅の各手法を組み合わせたデザインのほか、東洋と西洋、先端技術と伝統技法など、様々な分野の特徴を融合させたデザインを生み出している。

 その典型例が、新本社のエントランスだ。受付エリアの壁面には瓦やネジ、蝶つがい、電球といった建物の素材が現代アートのように飾られ、入り口正面には左官職人の伝統技法と先進的な技術を融合させたデジタルアートを設置。同社のフィロソフィーを視覚的に提示している。

多種多様な空間を構築

 1階は大部分を多目的空間「CORDs」として使用。ホテルテイストのデザインを採用しショールーム機能を持たせつつ、応接や会議、イベントなど「社内外の協創を育む場」(見月伸一執行役員兼クリエイティブデザインセンター長)として活用していく。

 2階が主な業務フロアで、原則的には会社統合後の各部門が集う場となっているが、その制限は緩やかだ。ある程度はゾーンが定められているものの、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の実践の場として、3階フロアも含め幅広いエリアから作業スペースを選択できる。

 そのエリアも、区画ごとに異なる機能とコンセプトを盛り込んだ。部署間の接点には連携を促す構造の「クロスオーバーロード」を複数用意し、ウェブ会議ブースはファッションブランド「ミナ ペルホネン」と協働して、ファブリックの素材感を生かした独特の空間を構築している。

 更に、カフェのようなリラックスラウンジ、キッチンやバーの意匠・設備を取り入れ顧客応対も可能な「キッチン」、インドアとアウトドアを融合させた「サンルーム」など、多様なワークスペースをそろえた。

新たな価値創出の場へ

 こうした空間デザインからは、同社が実現を目指す〝オフィスのあり方〟が幾重にも織り込まれているように感じられる。それは「クロスオーバーデザイン」の体現を軸として、「ウェルビーイング」「エンゲージメント」「協創」といった要素だ。更に、アートに使用した建築素材や随所に配置された植栽などにおける本物志向は、妥協せず品質を追求する姿勢を無言で主張している。

 見月氏は新本社の企画に当たり、「ニューノーマルにおけるオフィスの役割を考え抜いた」と述べる。それは「リモートワークが普及した今、あえて〝出社したくなる〟ことが重要」という前提の下、オフィスの魅力を高め〝人が集う場〟としての価値を最大化する作業だったとも言える。

 そしてその〝価値〟とは、多数の人間が知見や発想を掛け合わせ、イノベーションを起こす機会の創出だ。同社は新本社で示した通り、まさにその〝掛け合わせ〟による独自のデザインの力で、今後もオフィスにおける新たな価値創造の促進を目指していく。