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大言小語 おもてなし

 東京五輪がいよいよ始まった。開会式に先んじて行われた女子ソフトボールの日本代表がオーストラリア代表にコールド勝ちし、幸先のよいスタートとなった。中止か開催で意見が割れたまま大会に突入したうえ、場外では直前に無観客大会に決まった赤字負担を巡って国と都がバトルを始めている。国民は半ば呆れ気味で、国内でオリンピックという実感がわかないのが実情だろう。

 ▼参加国の選手団は、コロナ禍の苦境を乗り越えて、1年の空白期間を耐え忍んで、それぞれ東京五輪に臨んでいる。少なくともパラリンピックまでの全日程が終了するまでは、競技と真剣に向き合う参加国すべての選手たちを応援し、見届けたい。

 ▼振り返れば、東京の五輪招致が決定したのは13年に開かれたIOC総会。プレゼンテーション役として登壇した滝川クリステルさんが、訪れる人を心から慈しみ迎える日本社会に息づく「おもてなし」のアピールが話題になった。残念なことにこのスピーチのように世界各国の客人を迎える大会の実現には至らなかった。しかし、画面を通してでもその心と、日本の魅力を世界に届けることが今なすべきこと、できることではないだろうか。それがいつの日にか世界の人々の訪日につながることになる。

 ▼訪日客がいなくても無観客競技であっても、世界中の目が今、東京、日本に注がれている。日本にとって半世紀ぶりの熱い夏になる。